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マイ・ブロークン・マリコのangie2023のネタバレレビュー・内容・結末

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

手紙の内容はもちろん、二人の関係性の親密さに、私たちは図々しく立ち入ることはできない。
そのことを最後に気付かされることは、憎いし、ずるいとまで思う。

二人の関係性は偶像でも抽象でもなく、リアルなものであり、だから、マリコの「死への手紙」は、観客に開示することはないのだ。今まで散々と、その親密なやりとりを開示してきたのにも関わらず、この映画は最後、観客に現実を押し付けることになる。

その内容の重さとは裏腹に、上映時間の短さも含めて、この映画はカジュアルすぎる。私は配信で見たということもあり、その気軽さはますます増してしまっている。本来ならば、いや、本来とは何かわからないが、自殺ということも、取り残された友人の想いも、そんなに気軽なものではないのだ。この表象は、描けるようで描けるはずはないわけで、ましてや「ロードムービー」というような軽々しい言葉で形容することもできないのだ。

この映画は、もっと重く、暗くすべきであると私は思う。これじゃあ、マリコの死は道徳的、感動的、下手したら娯楽として消費され続けてしまうからだ。

でも、最後の最後に、その違和感はかろうじて拭われることになる。手紙は読まれない。今まで散々、彼女たちの親密な思い出や記憶が回想され語られ、観客も擬似的な友情関係を結んでいたのにも関わらず、最後の最後に、その「死」の寸前に書いたと思われる手紙は、言葉は、開示されることはないのだ。ああ、よかった。だけどちょっと、悲しい。私はそんな不思議な気持ちになった。映画としてこの映画の馴れ馴れしさは許し難いものがあったけれど、でも私も同じく、彼女たちの秘密を共有し、親密な関係性の中に巻き込まれてしまったのである。だから思う、マリコ、私にも教えてくれてもいいじゃないか…と。
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