ぼっちザうぉっちゃー

マイ・ブロークン・マリコのぼっちザうぉっちゃーのレビュー・感想・評価

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)
3.6
なぜだか原作既読の映画が続いているけれど、一番そのままで、一番印象が違う作品だったかもしれない。

全体的に質素な味付けで、音楽にしろ画面にしろ、ラストのスローモーション以外はほぼ演出のない平淡な仕上がりだった。原作の持つ、ド・シリアスな内容を強引に引っ張るコミカルに近いドラスティックさというのはかなり薄い印象。

主役の永野芽郁に関しても、くたびれ感をかなり抑えた、リアルな年代感覚を反映した人物像になっている気がした。しかし普段の可愛らしい声とは一変してドスを効かせた声からは、物凄い迫力とともに、剥き出しにした当て所ない感情が伝わってきた。

そして奈緒のおぼろげな存在感というのも、矛盾しているようで儚く成立している。
不意に色が抜け落ちたようになる表情に、浮かび上がる無の朗色。
限りなく黒目だけになるその様子が、可憐であると同時にどこか婀娜っぽい雰囲気もあって、目が離せない危うさみたいなものを感じた。