えむ

マイ・ブロークン・マリコのえむのレビュー・感想・評価

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)
3.6
劇場で見られなかったのでアマプラ解禁にて。

うーん、最初はやっぱり永野芽郁ちゃんのキャスティングには違和感ありました。個人的に。
違和感と共に、キャラクターとしての痛々しさもあるから、前半はちょっと苦しかったし重かったです。

昔、私も消息不明になった知人がいて、その子は仲良くなると最初は自分の境遇を語り出し、周りが心配して気持ちを寄せ始めると、途中からいつも人を傷つけるようなことを言ったりして「自分はやはり愛されないんだ」って自分に言い聞かせるようなそぶりを見せるから、マリコにその姿が重なって見えたし、そのくせある日突然全ての友人に対して音信不通になってそのまま消えてしまったから、シイノちゃん側のやるせなさとか憤りのようなものってありありと感じられる。
未だにたまーに思い出しては、マジふざけんなよ、ってなる。

そんな気持ちで重々しい気持ちでどこかイラっともしながら観ていたのだけど、マキオと出会ったシーン、「名乗るほどの者じゃない」ってほんとに言う人いるんだ!とか、そう言いながらくるっと振り返った時のアイスボックス、あれにめっちゃ救われた。

「大丈夫に見えますか?」
「大丈夫に見えます」

この言葉がたった数日でガラリと雰囲気を変える。
電車の中でお弁当を豪快に食べ始めたシイノに、ああこの子は生きていけるな、って思えた。


「人間メシさえ食ってれば生きていける」って近くのラーメン屋さんにデカデカと貼ってあって、最初にそれ見た時に「それはホントにそうだよな」って思ったの、自分がしんどい時もちょいちょい思い出す。


「一緒にお茶に行こう」
「一緒にパンケーキ食べよう」

マリコにとっては、シイノと一緒に「食べよう」って思ってるうちは、きっと生きていられたんだなと思う。

だから、「ご飯食べよう」って言う前に、勝手に結論出して、勝手にいなくなって、シイノはすごく悔しかっただろうし、それはきっと一生忘れることはない。
そうやって居なくなられないように、マリコは先にシイノの中に場所を作って生きていくことにしたのかもしれない。

最後の手紙のあの笑顔に救われたけど、やっぱふざけんなよ、ではある。
えむ

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