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マイ・ブロークン・マリコのinotomoのレビュー・感想・評価

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)
3.6
シイノは、ある日TVのニュースで、親友のマリコが死んだことを知る。マリコが幼い時から父親に虐待されていたことを知っていたシイノは、マリコの実家を訪れ、マリコの遺骨を奪って逃走する。そのまま、かつてマリコが行きたいと言っていた岬に向かうのだが、旅先でひったくりにあってしまう。

漫画が原作の作品とのこと。90分以下の尺でコンパクトにまとめられていて、それでいて作品の中のキャラクターの心情がガツンと響いてくる作品。マリコは幼い時から父親からの虐待され、実母に見捨てられ、彼氏は次から次へと出来るものの、DV男ばかりにひっかかるという、不幸を絵に描いたような人生を歩む。たまにまともな男と付き合っても、自分から離れてしまうのは、不幸でいることに慣れすぎたからこそ。シイノに依存している様子やマリコの心が壊れていく様子もよく描かれているのだけど、シイノ自身も親の離婚を経て、不良とはまた違った、ちょっと普通ではない女子として成長していて、シイノもマリコに依存しているということが、物語が進んでいくうちにわかってくる。「マイ・ブロークン・マリコ」というタイトルが秀逸。傷ついたマリコに膝枕をしてあげながら寄り添うシイノ。2人のこの姿がタイトルそのものという感じがした。

永野芽郁の演技をちゃんと見たのは初めてだったけど、男前なシイノを瑞々しく演じていて、特に怒りの演技が良かったと思う。今年度のアカデミー助演女優賞に「母性」でノミネートされてるみたいだけど、こっちは主演だから漏れちゃったのかな。残念。マリコを演じた奈緒も、守ってあげたくなるけど、時に人を苛立たせたりする、その絶妙で微妙なキャラクターを上手く演じていたように思う。人生のどこからやり直したらいいかわからないというマリコが何とも切なく、奈緒の演技も良かった。
シイノと旅先で出会うマキオを演じた窪田正孝の、フワフワしていながらも存在感ある演技はさすが。

子どもへの暴力は絶対に許されることではない。虐待されていたわけではないけど、親の離婚で、ちょっと歪んでしまったシイノを見ても、子ども時代に経験することが、その人の人生に大きく影響するんだなと改めて感じたし、傷つきながら肩を寄せ合って生きてきたシイノとマリコの姿を見ると何とも言えない気持ちになる。
ラストの、シイノがマリコの手紙を読んでいる時に見せる表情。文面は詳しく明かされないけど、死ぬことで解放されたマリコと、手紙を読んで微笑むシイノの表情に救いがある気がした。
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