ひろゆき

マイ・ブロークン・マリコのひろゆきのレビュー・感想・評価

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)
3.4
銀幕短評(#673)

「マイ・ブロークン・マリコ」
2022年、日本。1時間25分。

総合評価 67点。

この映画のいちばんの見どころは、あれですね。渡河(とか)のシーンですね。あのパートは みじかいけれど音楽もすばらしい。跳ぶ、落ちる、転がる、浸かる、ときて 渡河する。ああこの女はとことんどこまでもやり抜く気だな、そういう映画なんだな。と提示します。上品とはいえない彼女の話法も、そのための下地ですね。

表題について。マイ・フレンド、マイ・カー。ここらまでは普通名詞を用いたふつうの表現ですが、ここで マイ・マリコと固有名詞をもってくると、すこし様相が変わる。かれらは相互依存のパラサイト(寄生者)ですね。シイノがマリコになにかを差し出すと同様に(同時に)、マリコはシイノに別のなにかを差し出しかえす。シイノはマリコから受け取ったことを(ものを)自覚せず、気づかない程度のささやかな記憶の地層がすこしたまる。マリコの異変を察知したシイノは、いままで知らず かさなり続けた地層の堆積の厚さ、かけがえなさを知る。そうして地層の そこここを だんだんにめくっていく。そういうところを丹念に積み重ねて、映画は進行します。ていねいな作りで1時間25分は、いさぎよい長さですね。

ときどきに半端なギャグでほっとさせる気づかいは、かえってじゃまだと感じます。大上段に振り上げたそれをまっすぐ振り下ろすことがふさわしいテーマだと思いますよ、ひとの生き死には。
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