Millet

マイ・ブロークン・マリコのMilletのネタバレレビュー・内容・結末

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

マリコの壊れた演技、壊れた笑いが本当に壊れているコマーシャルを見て興味を持った。
見てみるとたいして深みのあるものではない、どんでん返しや裏もない。
現代に蔓延する劣悪な家庭環境。
親からの暴力、性的虐待で心の発育や病で、リストカットやDV彼氏に依存していたメンヘラがたまたま本当に死んでしまった。
共依存状態だった親友シイノが、マリコが死を弔う最後の奔走物語。

しかし物語が進むにつれて幼少期の頃から順に思い起こされるマリコとの思い出を見ていると、視聴者的にはマリコの死はそれほど重いものではなくなっていく。

小学生の頃、親から虐待を受けて常に青あざをつくっているようなマリコを気にかけていつもマリコの不幸に本気で怒ってくれるヤンキーのシイノ。ここまでは美しい友情だった。

中学生になりマリコがリストカットをしながら「シイちゃんに彼氏が出来たら私死ぬから」と面倒な女になっていた。まあ家庭環境のことを考えると自然なことだ。
浅い切り傷から滲む程度の血が溢れる。リアルだ、この時期のメンヘラ女子のリストカットってこれなんだよ!(歓喜)
でもシイノはそんなマリコの腕を掴み、彼氏なんか作らないからとマリコを安心させるようなことをいう。歪ではあるが友情だ。

高校生。あっさりと彼氏を作ったのはマリコの方だった。わかるわかる、中学生くらいまでは異性と付き合うとか異性なんて気持ち悪いと思ってたし、女友達との関係こそが人生の全てのように感じるんだよね。
しかも当たり前のようにシイノとの約束をドタキャンして「彼氏がバイト休みになったから行かなきゃ怒られちゃう」と教室を飛び出していく。これだけ見たら完全にクズ女だ。
でもこの頃にはもう父親から性的虐待を受けていたし、壊れた心にあわせて壊れた体、生き方をして彼女なりに自分を守ろうとしている証拠だ。
ころころ変わる彼氏が自分を殴ったり怒ったりしてくれるのは自分を好きでいてくれる証拠のようにも感じていただろう。
もう普通なら友情も何もなくなっているだろう。

シイノも例外ではなくマリコを面倒だと思っていた。でも離れられなかった、シイノに共感しかなかった…

それから最後の手紙の内容はいったい何だったのか。これは我々にはわからないようになっているが、きっとたいした内容ではなかったのかもしれない。
でもシイノの表情から察するにマイナスの内容や遺書のようなものではなかったんだろうな、と。
マリコの死を受け止め、ブラック企業でもたくましく上司に声を上げられるシイノはやっぱり「大丈夫に見える」
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