もずめ

私の親友、アンネ・フランクのもずめのネタバレレビュー・内容・結末

3.3

このレビューはネタバレを含みます

同じ収容所にいたアンネとハンナの待遇の違いは、ハンナの父親ハンスがパラグアイへの旅券を持っていて「ドイツ捕虜との交換要員」となっていたから。(実際に交換された人はいない)
ハンナやガビはユダヤ人捕虜の中ではかなりまともな生活ができていた方で、丸刈りになったり縞模様の服を着せられたりしていないしガビのような小さな子も生きられた。赤十字からの支援物資もあったらしい。

この物語は2022年まで存命だったハンナの目線の話で、有名なアンネの隠れ家の描写や悲惨な収容所の描写はなく、そこが新鮮だと思った。
アンネの日記は父オットーから出版されているので、理想の娘像が投影されている。性的な部分等削除された項目も多いと言う。
だからこそ、友達から見たアンネの姿というのは貴重。
アンネはよく聖女のように言われているけどそれは亡くなってしまったからこその描写であって、本当は普通の、おてんばな女の子だったんだろう。意地悪な面があったり、人を馬鹿にすることだってあっただろうし、性的なことに興味を持ったりもしていた。アンネが特別悪い女の子だったとは思わないし、ごく普通の、まあリーダー格っぽい女の子だったのかなと。

ハンナの悪い部分は描かれずハンナがいい子に写っているのは、ハンナ目線の映画だからというのはあるだろう。
脚色ありなので、これが全てではなかったと思う。実際にこの映画ほどアンネの大親友というわけではなかったようだし、アンネには別の、ハンナにも別の大親友がいたとハンナ自身が認めてる。でもこぐま座の仲間たちというくくりがあったように、「仲良しグループの一員」だったのは事実だろう。

アンネの父オットーはハンナを隠れ家に連れて行こうとしていたくらいなので、家族ぐるみの付き合いだったのは確か。でもこれが実現していたらきっとハンナは助かっていなかった。結果論でしかないけれど、ハンナとガビは父ハンスの決断のおかげで生き残ったんだ。

父に楯突いて妹や収容所仲間を危険に晒してまでアンネに何度も食糧届けるシーンはさすがに無謀だよ!ガビや他の人たちのこと考えて!と思ってしまって感動に持っていけなかった。草をどかしてアンネの顔が見えたシーンは少しグッときたけど、実際はアンネはもっとガリガリでもっと悲惨な見た目だったろうと思う。

アンネ目線ではないアンネフランクの物語であるという点は面白かったし、アンネたち以外の収容所がどんなところだったかが描かれているのも良かった。ユダヤ人全員が同じように扱われていたわけではなかったり、妊婦だとゲシュタポに連れていかれない場合もあることとかも。
そして差別はあったもののキラキラしていた収容所に行く前の話との対比という構造もよかった。
でも話としてはそんなに深くはなく、少しだれている部分もあった。アンネに関することをそこまで知らないので掘り下げる部分が少なかったのかもしれない。

ハンナとガビが生き残り、子供がたくさんできて孫も20人以上いるおばあちゃんになっていてよかった。
ハンナとガビが生還した後オットーが2人の面倒を見ていたこともあったらしい。娘2人を亡くしてしまったオットーは、生き残った姉妹を見てどう思っていたんだろう。

最後の文でアンネは本人の願った通り世界中で有名になったと言う皮肉。アンネはきっとこんなふうに有名になるより、いきたかったよね。
アンネが聖女のように扱われていることに、アンネの性格を知るハンナは「アンネならこんなこと望まない!」と思っていたのかもしれない。だからこそのアンネのこの描写なのかなあ。
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