このレビューはネタバレを含みます
物質的豊かさは、《幸せ》に直結するのか、を単なるノスタルジーや感動で終わらせない、映像美と鋭い視角でアイロニカルに問う作品だと感じた。
(1) 死んでしまったあと、肉体は形として残りはしない。それを知ったうえでも、「麦の花」をかたどる。物理的には離れることになったとしても、見失うことはしない、という決意を示すかのように。
(2) 都市での物質的に「満ち足りた」生活と、自然の秩序にただ従う自己充足的な生活の対比が、印象的だった。が、自己充足的な時間さえあれば、《幸せ》なのか。最後の数分、鋭くこの問いが突き刺さる。
(3) 人間社会に「こき使われる」ロバ。最後に「解放」した、そのときの情景が、有铁の心象風景と重なる。「自由」と言われ、何をしてもいいと言われても、どう振る舞ったらよいのか、実は人間にはわからないのではないか。