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小説家の映画のSQURのレビュー・感想・評価

小説家の映画(2022年製作の映画)
3.0
どういうふうに観たらいいのかよく分からない映画だった。
でも仕事終わりだったけど不思議と眠くなることもなく、これは果たして何を伝えたいのかな?とか思いながら観ていた。最後まで観てもその点はよく分からなかったが。

ゆえに以下は批評ではなく、観てる間に浮かんできたこと。
・白黒だとカラーと違って見える部分が結構ある。まず、白黒だとあんまり相手の意図が読めない。別に色彩で人の感情を読んでいるわけではないはずだけど、分からなくなる。さらに不思議なのは、笑顔だとそこそこ見分けがつく。表面的な笑顔なのか、心からの笑顔なのかちょっとわかる。それ以外は難しい。
また、白黒だと風景が寂しい感じがする。春みたいな陽気だと言われても、観ている私にはその"春っぽさ"が部分的にしか共有されない。春の寂しさだけを受け取る。寂しいだけではなく子供のころよく観た景色だなぁ、と感じる。それを一番強く感じたのは公園のシーンで、公園をよく訪れていたのが子供のころだから、というのはもちろんあると思うけれど、それを加味したって、今公園に行ってもあのように景色は視界に写らないと思う。
・双眼鏡のズームが気持ちいい。白黒でこういうズームの画は今まであまり見たことがなかったかもしれない。
・芸術家が5人集まるシーン。最初はあんまりなにも感じなかったが、途中で「この人たちはみんな"芸術家"なんだ」と気づいたときに不思議な感覚を覚えた。5人それぞれ立場が違い、成功せず諦めた人、成功せず成功を夢見てしがみついてる人、成功したけどやめた人、成功したけど上手くいかなくなった人、成功してそこそこでやっている人、とかそれぞれ違う。そして、その5人が集まるとひとりでいるときには表出してこないだろう"哀しみ"がその場の表れる。人生の敗者の集まりとしての悲しみとかそういった一般的なものではなく、創作を志している人が集まったがゆえの哀しみなのだという気がした。P.S.最初の方に出てきた映画監督がこの不思議な日に同じ場所に居合わせなかったということを考えると、その哀しみとは「実存と向き合うことに対する疲労の分かち合い」的なものだったのかもしれない。
・最初に「帰りの方法を考えてない」と話したときに、死ぬつもりなのかなと思った。屋上のシーンでフレームから外れたときもそう思った。ラストシーンで迎えに来ないところなども。ただ、作中映画に色味が現れたときそうでもないのかなと思った。カラーの部分はどことなくドキュメンタリーチックで生を思わせるが、白黒の部分は音楽も相まって死を予感させる。結局その真相が映画本編で説明されることはないが……。
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