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ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュのKUBOのレビュー・感想・評価

3.8
今日の試写会は『ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ』。タリバンと間違われて無実の罪で投獄された息子を取り戻すために、アメリカのブッシュ大統領を訴えたお母さんの実話に基づくお話だ。

まず、主演の肝っ玉お母さんラビエを演じたメルテム・カプタンに拍手! この人、本業はコメディアンということだが、本作でベルリン国際映画祭の主演俳優賞を受賞。ともすれば、暗くなりがちなこの手の作品に、ものすごいパワーとユーモアを注ぎ込んだ。

全く物怖じしない肝っ玉と、誰もに愛される笑顔、どんな逆境もはね返しちゃうパワフルさを持っていると同時に、

息子の解放を訴えにワシントンに行くのに、実はちょっと初めてのアメリカにワクワクしちゃったり、スピーチする前に気にするのは髪型だったり、支援団体のメンバーの有名俳優にドキドキしちゃったり、

この人、ともかく愛されキャラ!

で、このラビエを演じるメルテム・カプタン無くしては、本作は成り立たなかっただろう。

また本作は弁護士ベルンハルトとラビエのバディムービーとも言える。弁護士事務所にアポ無しで突撃してきたラビエに最初は振り回されていたベルンハルトは、いつの間にやら押しの強〜い愉快なおばちゃんとバディになっていく。

そうそう、トルコ人だけど、ラビエって大阪のおばちゃんみたいなんだよね。厚かましさも、ファッションも(笑)。

タリバンの疑いをかけられて、あの悪名高いグアンタナモで監禁って、政権がブッシュからオバマに代わった後で、アメリカが拷問の実態を認め大ニュースになった、アレだよね。

「疑い」だけで「捜査」もなく、第三国(パキスタン)で拘束してアメリカ軍基地の収容所に監禁するなんて、イラク戦争自体そうなんだけど、ブッシュ政権下のアメリカ横暴は尋常じゃない。

今、中国が他国に警察組織を置いていると問題になっているが、やっていることは同じようなことだ。

果たしてムラートは解放されるのか? 母の思いは届くのか?

重厚な社会問題をテーマにしながら、なんとも楽しく見られる作品。ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞の傑作です。

*エンドロールでキャストが本人とそっくりなのにビックリ!
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