イザベル・アジャーニがドイツ語で歌う「人は愛するものを殺す」は、オスカー・ワイルドが同性愛の罪として収監されたことを元にした詩に曲をあてたものだという。
ドリアン・グレイもかくやな美青年に恋をした1人の映画監督がひたすらその恋に悶え、踊り、歌い、喚き散らすだけの映画と言ってしまえばその通りなのだが、その"運動"の愚かしさを可笑しんでいたらだんだんと愛着すら湧いてくるドゥニ・メノーシェの駄々っ子ぶりは見応え十分。
いや、権力勾配の明らかな二者間の「恋愛」なんてそもそも色々と危ういんやけど、ファスビンダー愛溢れるオゾンのフィルターを通した"劇"映画としての今作は不思議なほど魅力的。
「人は愛するものを殺す」というよりも、エイミーワインハウスの「Love is a losing game」がしっくりくるような耽溺っぷりを、その巨体でわんぱくに演じるドゥニ・メノーシェを観る映画。カールの視点で。