フランソワ•オゾン監督がファスビンダーの『ペトラ•フォン•カントの苦い涙』を現代版にリメイクした作品。
主要なキャラクターを男性に変更し、ファスビンダー作と同様に愛の本質をあぶり出している。
監督として成功しながらも、深く孤独や不安を抱えているピーター。
エゴイスティックで依存的な愛を向ける姿は、人間の普遍的な愚かさ、醜悪さ、そしてある種の美しさを露呈させる。
ドゥニ•メノーシェの演技はさすが。
ファスビンダー作に比べてカットが多かったり、カールのタイプする音が小さくなったり、より映画的になっている。
ただ台詞はけっこうファスビンダー作と同じで、二番煎じ感はある。
作品時間も短いためにコンパクトにまとまってはいるが、キャラクターたちの会話が深掘りされていない感じも受けてしまう。
その結果、メロドラマ感が強まってしまったかも。
カールのラストの行動の改変も、わかりやすく力強くはなったけど情緒は削がれた印象。