たま

苦い涙のたまのレビュー・感想・評価

苦い涙(2022年製作の映画)
3.5
人はいとも簡単に他人を傷つける。
手段は星の数ほどある。
そして、傷つくのも容易いこと。

舞台は1970年代だろうか、タイプライターやダイヤル式の電話が懐かしい。
映像の質感もレトロで、アナログ感が漂う。

主人公ピーターは、成功した映画監督。中年の暑苦しい太っちょ。
アシスタントへの横柄な態度も相まって、好感度はゼロ。

今だ変わらぬ美しさの、イザベル・アジャーニ演じる大女優が、若い魅力的な青年アミールを連れてやってくる。
美しさと初々しさと色気を兼ね備えたアミールに、すっかり夢中になるおっさんピーター。

権力を持った人間が、自分の欲望のままに、お気に入りを自分のモノにしょうとする。これは完璧な性的搾取じゃないか。

しかしアミールは奔放で強かだった。

翻弄され、嫉妬心に取り憑かれたピーターはまるで狂気の沙汰。

相変わらずアシスタントを粗野に扱い、手にしたものを破壊し、親友、母親、娘にも暴言を吐く始末。

もはや誰も手をつけられない。
権力者の欲やエゴは、こうも果てしないものなのか…

不快なほどのピーターの、一人芝居にどっぷりと浸かる。

そして、ピーターは“愛していた訳では無い、所有しようとしたんだ”と呟く。

散々荒れた後、自身で気持ちに決着をつける。

見ている時は不快に思い、苛立ちも感じたけど、見終わってみれば、すっかりオゾンの世界を楽しめたなぁと思う。

しかし、人間って愚かな生き物だなぁ。
たま

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