ノスタルジーという鍋で煮込んだ家族の物語 in パリ。
1980年代のパリを映した記録フィルムを挟み込みながら、インテリア、ファッション、音楽、映画、車、深夜ラジオ...と、当時を再現した世界の中で繰り広げられる家族の物語を、あの時代のフィルム撮りに寄せた映像で写し撮っていく。
1981年、'84年、'88年のある時期、母と子二人(時々お祖父ちゃんも)の家族の営みを写し撮るだけで、特に何か物語がある訳ではない・・・夫が女を作って出て行ったり、家出少女が転がり込んで来たりはするけど・・・。
それが面白いのか?と問われると、これが良いんだなぁ。凄く良いんだなぁ。
とにかく映し出されるものが美しく、ノスタルジック。そしてお洒落!
そうかと思うと、仲の良かった女の子が急に色あせて見える男の子の心理を映像だけで表現する、あのシーンのカメラの残酷な事と言ったら!
予想外に裸やSEXシーンが写るのだが、生々しく容赦なく写し撮るけど、美学も感じるのはフランス映画っぽい
80年代フランスを代表する様なエマニエル・ベアールとシャルロット・ゲンズブールの二大女優が出演しているが・・・歳を取ったなぁ・・・としみじみ。
意外だったのはシャルロット・ゲンズブールが、チャーミングな事!
若い頃は同世代の女の子とロリコンおじさんが騒いでいるだけで、全然魅力的には見えなかったんだが・・・実際、今も特に美人だとは思わないし、身体も子供達に「痩せすぎ!」と言われるくらい貧相だったりするんだけど・・・声も表情も、物凄く可愛らしいんだよ。ビックリ。
移動しないロードムービーというか・・・気が付くとあの時代にタイムスリップしたかの様な空気感が素晴らしくて、映画が終わるのが惜しまれる位、家族と時代の空気に浸ってしまう。
正に映像詩という様な作品。