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午前4時にパリの夜は明けるのkabcatのレビュー・感想・評価

3.8
この監督は、喪失と再生という同じテーマを常に優しい目線で描き続けている人だが、今作は80年代のパリを舞台にノスタルジックな映像とともに描いているのが新鮮でマンネリ感はない。物語自体も、夫に出て行かれた中年女性が、残されたティーンの子供たちを抱えてなんとか生きるすべを見つけ、だんだん自分に自信を持てるようになる、というありがちな内容なのだが、ゆっくりと時間をかけて少しずつ変化していくようすがとても自然である。みんないい人すぎないかとつっこみたくなるけれども、かれらを見ていると微笑ましく思えてしまうのであり、そういう優しい気持ちにさせてくれるのが監督の魅力なのである。

「ラジオ」という媒体やUKものを含めた当時の音楽、ロメールやリヴェットの作品、そしてそれに出演していたパスカル・オジェ‥マチアスとほぼ同じ世代なので何もかもが懐かしい。

そうして主演のシャルロット・ゲンズブールと重要な脇役を演じたエマニュエル・ベアールこそ、80年代を象徴する女優たちであり、当時のキラキラした姿を思い出す一方で、その40年後もこうして年を重ねた美しさを見せてくれることをうれしく思う。繊細でもろい女性を演じるとシャルロットはやはりうまい(でもあんまりそういう役をこれまで演じてないよね?)。エマニュエル・べアールも久しぶりに彼女に合っている役を演じていると思う。タルラ役のノエ・アビタもとても印象的なルックスで80年代の雰囲気にぴったりだったし、長女役のメーガン・ノータムの持つ柔らかさと芯の強さもすごく好きだった。

ただこの監督の作品で気になるのは、過剰な性描写だ。これまでの作品でも、性行為をきっちり描くことが多くてそこだけ生々しく浮いているようだった。どの作品においてもあまり必要性を感じないのだが、監督の趣味なのかな‥
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