masahitotenma

午前4時にパリの夜は明けるのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

3.5
1980年代のパリを舞台に、深夜番組が繋いだある家族の7年間の軌跡を描いたヒューマン・ドラマ。
監督は「アマンダと僕」のミカエル・アース。
撮影はセバスチャン・ブシュマン。
やさしいオリジナル楽曲はアントン・サンコ。
原題/Les passagers de la nuit
(2022、112分、R15+指定)

1981年のパリ。
夫と離婚したエリザベートは、一人で子どもたちを養うことになり、ヴァンダがパーソナリティーを務める深夜放送のラジオ番組「夜の乗客」で、リスナーから架かってきた電話を取り次ぐ電話受付の仕事に就く。
そこで、孤独な番組リスナーの少女タルラと出会う。
家出をして外で寝泊まりしていると知ったエリザベートはタルラを自宅に招き、ともに暮らし始める。
ともに過ごすなかで、"家族"は、訪れる出会いや変化に不安や戸惑いを感じながらも、それぞれの人生を進んでいく…。

~登場人物~
・母エリザベート(シャルロット・ゲンズブール)
・長女ジュディット(メーガン・ノータム)
・長男マチアス(キト・レイヨン=リシュテル):思春期。
・家出少女タルラ(ノエ・アビタ):18歳。
・ラジオのパーソナリティー、ヴァンダ(エマニュエル・ベアール)

「私が触れるものは全て壊れ汚れるような気がする」

「他者は過去の私たち。他者が垣間見るのは私たちの破片や断片だ。彼らは私たちの夢を見る。でも他人同士だ。私たちはいつもすばらしき他人。彼らが生んだ夜の乗客。部屋の奥に映るおぼろげな影」

家出少女タルラのモデルは、1984年に25歳で急逝したパスカル・オジェ。
タルラ役のノエ・アビタがとてもよい。
映画はオジェに捧げられ、劇中に彼女の出演作、エリック・ロメール「満月の夜」(1984)やジャック・リヴェット「北の橋」(1981)が登場する。
ほかにも、ジャック・リヴェット監督が登場するクレール・ドゥニ監督の「ジャック・リヴェット、夜警」(1990)のアーカイブ映像も。
透明感のある優しい質感の映像と色彩が優しく、ラストのカメラの眼差しも美しい。
80年代のヒット曲からは、
・ペイル・ファウンテンズ「Unless」
・テレヴィジョン「See No Evil」
・ヘヴンリィ「Punk Girl」
・そして、家族の思い出の曲、ジョー・ダッサン「Et Si Tu N’Existais Pass」など。
なお、最近のフランス映画で愛を表現するために定番になっている、体を交える生々しいシーンは、個人的にはない方がよいと思う。
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