クロスケ

遺灰は語るのクロスケのネタバレレビュー・内容・結末

遺灰は語る(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

とある作家の遺灰を故郷シチリアまで運ぶ道中で見舞われる幾つかの些細なトラブルが、美しいモノクロームの画面と控えめなユーモアを交えながら描かれます。
やっとの思いでシチリアに辿り着いた作家の遺灰が、海に向かって舞い散ったかと思うと、モノクロームだった画面に色彩が甦り、作家の代表作の一編がエピローグとして語られる構成の大胆さには不意を突かれはしたものの、新鮮な鑑賞体験でした。

長年パートナーとして共に仕事をしてきた兄ヴィットリオが逝き、自身も高齢となったパオロが母国のノーベル賞作家の遺灰を巡る顛末を通して「死」に思いを馳せます。
ベッドに横たわる作家の臨終のシーンから始まり、第二次大戦前夜から戦後のイタリアの「歴史」をロッセリーニやズルリーニなどの名作を引用しながら、最後には大勢の観客の拍手の音で締め括られるこの映画は、「生」を慎ましやかに讃美しているようです。

遺灰を運ぶ特使がその道中、列車内でイタリア人の青年とドイツ人の娘の若いカップルに出会う。
シーンが変わって夜。闇夜を走る車窓から差し込む外光に照らされて、二人の影が蠢いている。若妻の胸元がはだけ、白い肌が露わになる。その乳房を若い夫の手が撫でている。

甘美なエロティシズムが素晴らしい。
クロスケ

クロスケ