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遺灰は語るのTakaCineのレビュー・感想・評価

遺灰は語る(2022年製作の映画)
3.8
【遺灰と釘と不条理と】
時間がちょうど合ったので鑑賞。タヴィアーニ兄弟の弟さんであるパオロ・タヴィアーニさんが監督した作品。お兄さんは2018年に亡くなっていたのですね😢(知らなかった)

劇作家ルイジ・ピランデルロの遺灰を生まれ故郷に届ける旅&彼の短編「釘」を映像化した作品です。

いわゆるアート系な作品でした。前半の"遺灰の旅"パートはセミドキュメンタリーな感じ、美しいモノトーン映像で再現ドラマ(事実ではなく創作)をしていて、僕はこちらの前半パートの方が楽しめました。

遺灰を運ぶローマからシチリアへのトラブルだらけの珍道中(列車のカップル話は良かった!)、シチリアでの葬儀の不謹慎な笑い(全然面白くはないけど)は、ネオリアリズモ映画の雰囲気がありながら、シュールな作風でしたね。

ロッセリーニ作『戦火のかなた』(1946、未見)などイタリア映画の映像が引用されているところと、僕が好きな『イタリア旅行』(1954)に近いコメディ要素は面白くてそこは好きでした。

ただ描写が説明不足で難解な取っつきにくさは否めず、少し眠気を誘うアート作品な風情😅(所々、うつらうつら💤)

ポスターの場面は、『2001年宇宙の旅』(1968)の全知視点みたいな達観した感じが驚きでした😮

更に意味不明だったのがピランデルロが死の20日前に書いた短編「釘」を映像化した後半パート。ビビットすぎる映像が前半と違いすぎて違和感😥物語も"定め"に動かされる不条理さが難解で分からんちん😖💦(それこそが良いのか?僕には謎)

人生は滑稽で不条理だ。

全体を通して、死を尊厳として描く静謐さ(火葬、壺や棺に納める、役者たちの哀悼、遺灰を撒く)、荘厳な音楽は凄く良かったですね‼️

ピランデルロが、1934年にノーベル文学賞を獲ったことは初めて知りました。

ちょっと難解で不思議なアート作品でした。90代で本作を創ったパオロ監督の感性は凄いと思います。
映画の見識を拡げるにはうってつけかも😉

タヴィアーニ兄弟の作品なら『父/パードレ・パドローネ』(1977)は昔から好きでした。
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