れーちゃん

息子のまなざしのれーちゃんのレビュー・感想・評価

息子のまなざし(2002年製作の映画)
4.5
これぞダルデンヌといえる作品。
職業訓練所で大工を教えるオリヴィエ。
離婚した元妻は第二の人生を送っており、 オリヴィエは1人寂しく殺風景な部屋で孤独に生きている。唯一、職業訓練場での仕事にやりがいを感じながら生徒には厳しくも真面目に指導していた。
ある日、ある生徒が訓練所に入ったことに気がつく。オリヴィエは、その生徒・フランシスのことが気になって仕方がない。













そう、フランシスはかつて元妻との間に授かった息子を殺した犯罪者だったのだ。

自分の息子を殺したフランシスに対するオリヴィエの言動や行動は怒りや悲しみに満ち溢れながらもどこか父親のような優しさを感じる。
しかし、フランシスのことだけ名前で呼ばなかったり、車を運転中に隣で眠っているフランシスを急ブレーキで叩き起こす場面、アップルパイの会計を別でと言うなど、やはり彼を受け入れることができずにもがく。

フランシスの「反省」や「償い」は一体どれだけの重みなのだろう。わずか11歳だったフランシスが刑務所で過ごした貴重な10代の5年間。
犯した罪は重たいが、事故でもあった。未だに高所に対するトラウマも抱えている。
オリヴィエに自分の後見人を依頼したり、一生懸命大工の仕事を覚えようとする姿を見ると彼を擁護したくもなってくるが、どこか"元犯罪者" の目線でフランシスを見てしまう。

フランシスの純粋かつ世の中を知らない真っ直ぐな眼と、オリヴィエの辛さや悲しさ、怒りに満ち溢れた眼、その裏にある真実と現実。
これらが混ざり合って最後はダルデンヌらしさで締める、緊迫感ある作品。

フランシスが貰ったばかりの定規を常に持ち歩いている姿を見て、そのあとの2人の掛け合いがなんとも愛おしく切なく、胸が苦しくなった。
れーちゃん

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