あつぼう

息子のまなざしのあつぼうのレビュー・感想・評価

息子のまなざし(2002年製作の映画)
3.8
最初は息子を殺されたオリヴィエのフランシスに対する行動に疑問を持ってしまった。自分なら息子を殺した犯人が目の前に現れたら復讐するはず。でもね実際はそう簡単な問題でもないんやろうけど、冷静にはいられないのは確か。
オリヴィエは息子の最後を知るフランシスを観察するんですが、この2人の緊張感が凄いんです。観ていていつ復讐するんやろって手に汗握るぐらいの緊張感がありました。オリヴィエもフランシスもセリフがほとんどないので一つの動作や顔の表情の変化などで空気が張り詰めてしまいます。
効果音や音楽もなくしてるので緊迫したお互いの呼吸音がリアルに聞けます。ハンディカムで撮影してるので手ぶれ感がさらに緊張感を煽ります。

この映画の中でフランシスが「5年も刑務所で罪を償った」って言うセリフがあるんやけど、これって加害者の一方的な思い込みで、被害者は子供を失った悲しみや苦しみを一生背負って生きていかなければならないんです。加害者は刑期を終えたから罪を償えたって思うのは間違ってますよ。なんかこのセリフが凄く印象に残ってしまいました。

ダルデンヌ兄弟の作品って小道具をさりげなく使うのが巧いんですよね。
この映画でもオリヴィエとフランシスが出かける時に車のトランクにロープを入れるのを印象づけたりするんです。観てる人は、さてはこのロープで復讐をって変な期待感を抱かずにはいれないですからね。このロープをどう使うのかは観てのお楽しみです。

冒頭からほとんどオリヴィエの背中を追いかけるように撮ってるのですが、これって邦題のとおり息子の視線から父親の背中を見てるって事なんでしょうか。

重いテーマを扱ってる映画なんで万人受けはしないと思うけど凄く考えさせられる良い映画でした。
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