前方後円墳

夜がまた来るの前方後円墳のレビュー・感想・評価

夜がまた来る(1994年製作の映画)
1.0
石井隆監督の「名美」シリーズひとつ。
夜のシーンしかないこともあり、かなりハードボイルドな雰囲気になっている。基本は土屋名美(夏川結衣)な過酷な人生とそれに惚れる村木哲郎(根津甚八)を綴った物語で、これでもかというぐらい名美を不幸のどん底に突き落とす。シリーズ一貫して"自立していく女"を描こうとしているのだが、結局、この作品で名美は自立していたのかというと、そういう雰囲気はない。ただ、そこにある生き方しかできない状況があるだけで、最後まで彼女が選んだ道はどこにも描かれていないような気がする。
幸の薄そうな面立ちをした夏川結衣はとても不幸が似合うのだが、どん底に落ちて、夫を殺した仇を殺そうという鬼の気迫が感じられないのが物足らない部分であり、この作品の一番のウィークポイントでもある。単純ながら、濃密な叙情と哀愁がこのシリーズの良さであり、演歌さながらの"こぶし"が今ひとつ足りないのだ。