花火

コール・ジェーン ー女性たちの秘密の電話ーの花火のネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

階段を降りてホテルのロビーを歩くエリザベス・バンクスを後ろからフォローするカメラが彼女と共に外に出ると、辺りをぐるっと囲む警備隊に遭遇する。外で抗議行動をするデモ隊は直接ではなく建物にかかる影として表象され、タイトルを挟んで彼女がホテル内に戻ると、まるでゾンビかのようにドアのガラスに取り押さえられる姿が写される。これら冒頭数カットだけで、エリザベス・バンクス演じるジョイの人物像を画面として立ち上げる手腕に魅せられる。台所で曲に合わせて踊っている最中にぶっ倒れたり、階段から落ちれば流産できるという怪しげな民間療法を試そうとして思いとどまったのち足を滑らせて本当に落ちかけたりといった、アクションの瞬間的な活劇性さえ演出してみせるのだから、フィリス・ナジーは『キャロル』の脚本家という肩書に留まらない才能の持ち主なのだろう。中絶経験をきっかけに"外側"に目を向けるようになった彼女は、だから大学図書館で婦人科の本を探しに行ったとき、右への移動撮影で写された歴代学長(全員男性)の肖像の反対、目的を果たしてそこから去るときの左への移動撮影で壁に掛けられた卒業写真を見つけて、中絶手術を行うディーンのトリックに気づけるわけだ。終盤はあまりに「物語」としてまとまり過ぎているものの、逆にそれだけ現状が悪化しているということなのかもしれない。
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