鮭茶漬さん

コール・ジェーン ー女性たちの秘密の電話ーの鮭茶漬さんのレビュー・感想・評価

4.0
妊娠によって心不全を起こし生命の危機に陥っても中絶禁止下で苦悩する主人公たち。印象的だったのはやむを得ない理由で中絶を病院に相談するも、男性医師が口にするのは「子供」が無事に産まれる可能性ばかり、そこに母胎の心配は一切なかったこと。レディ・ファーストの国と言われていようが、所詮は女性軽視が根底にはあり、子供を産むための男性の所有物という印象が拭えない。中絶手術をカボチャの種を掻き出すことに例えたのは少し悪趣味な気もしたが、女性が当たり前に「選択」できる尊さを今一度感じる映画である。
主人公は、法に背いた中絶支援団体「ジェーン」に依頼してくる女性でも、健康上などやむを得ない理由でない不健全な中絶に嫌悪感を示すものの、最終的には受け入れる。結局は、権利の問題なのだ。もちろん、不健全な性交で得た結果の中絶には個人的には感心はしないが、それとは論点が異なる。出産をするか否かの選択は男性にも責任が伴い、結論を自由に導ける社会が必要である結論に達するからだ。劇中、ニクソンが当選したことを皮肉っぽく描いたことが意味深だと感じるが、不思議なことに現代がこの時代に逆戻りしようとしているのだから愕然としてしまう。トランプ再戦に備えて見るべき映画に間違いない。

主演のエリザベス・バンクスも普段は見過ごしてきた女優だが、なかなか良い味を出していたし、シガニー・ウィーバーの反体制っぽさも最高だった。中でも、中絶医師を演じたコーリー・マイケル・スミスの不敵な雰囲気が好き過ぎた。
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