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夜叉 容赦なき工作戦のeikotomizawaのレビュー・感想・評価

夜叉 容赦なき工作戦(2022年製作の映画)
3.7
スパイ映画かつソルギョング、パクヘス、池内博之とメキメキ多言語話者で揃っていることもあって、日本語韓国語中国語ドッキングなので、吹替で観ちゃうと中途半端にネイティブ役者日本語と声優仕事の吹替声で会話のラリーが続く気持ち悪さがあり、かといってシンプルに字幕一本でいくには映画鑑賞というより内容理解への努力に引っ張られるというか、これ最低でも二か国語はノーストレスで聞き取れないと地味に情報過多で見づらいかもと心配してしまうちょっと周囲に薦めづらい良作。点伸びないの前提で良作を撮るって覚悟必要だったと思うなあ。

言い換えればこの三言語のうち二つでも理解できれば、なかなか体感できないタイプの気持ち良さ、さっぱり感がある。地政学も多少頭に入っていると解像度もぜんぜん違う。

工作系の内容は多言語前提の作りじゃないとおままごと感が出てしまうけど、しっかりしていたらしていたでメタな部分でヤキモキすることになるとは・・・🧘🏼‍♂️


あとまあこれもあるあるだけど、日本人がコテコテに悪役で描かれることへの不満、日本を嫌いにならないで!みたいなレビューは腐るほど見かけるけど、どうしてここまで隣国双方にエクリチュールに近いレベルで日本人がこういう位置付けで描かれがちなのかは相互理解のきっかけとしてもうすこし鑑賞者側から掘ってみてもいいと思うけどな。せっかく観たんだから、単純な不快さに引っ張られた感想で止まるより、考える余白を残してみるのも良いんじゃないかなあ。

日本はよく言えば武士道精神、死んだらノーサイド感覚なんだと思うけど、それは一方でかなりドライな価値観とも呼べるというか、例えば豊臣秀吉とか日本史アイコンくらいの感覚だけど、一方で隣国の武将が自国の女子供の耳や鼻を削いで持ち帰って耳塚作ってその近所に神社作って祀りまーす!CMキャラにもしちゃいます〜!ってなったら、いくら昔のこととはいえ割り切れない気持ちくらいなるでしょ。

あらゆるコンテンツや言説において「過去の出来事は、その後に生まれた、いまを生きる私たちとは関係ない」って捌くのは勝手だけど、それは"古き良き日本のノーサイド価値観"の範疇を出てないと思うけどね。相互理解ってやっぱり互いの異なりや共通点を、そして相手と自分をなるべく同じくらいの客観性で見る努力をしたその先に結実するものだと思うよ。
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