寝木裕和

PLAN 75の寝木裕和のレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
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お金を多く蓄えた人、要領のいい人、生産性の高い人、お上の望むものを望むように差し出せる人…… だけが優れた人、というわけではないはずなのに(それができなかった人、できなくなってしまった人が劣っている人ではない)、優生思想と地続きであるとも言えるような方向に先導すべく、制度や法律を変えていこうとする国家ならば、そんな国家に未来なんてあるのだろうか。

高齢者や、身体的・精神的、なにかしらの障害を持っている人たちが、将来になんの不安も持たないでいられるために、福祉があり、社会的人権を守られているはずなのに。

…そんなことを考えることが多くなってしまうような、どこかの准教授の発言やら、事件の報道やら、政治の動向やらが耳に入る機会が増えている気がする。

そんな時に観たこの作品には、激しく胸をかき乱された。

しかし、多くを語りすぎない演出ながら、仄かな希望を感じさせる最後のシーンで、観ている私たちがすべきことを暗に教えてくれている気がした。

今、なにを守らなくてはいけないのか、そしてはっきりそれを言い続けるということ。
観終えた後に、大切な約束をしたような気持ちになった作品。
寝木裕和

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