お金を多く蓄えた人、要領のいい人、生産性の高い人、お上の望むものを望むように差し出せる人…… だけが優れた人、というわけではないはずなのに(それができなかった人、できなくなってしまった人が劣っている人ではない)、優生思想と地続きであるとも言えるような方向に先導すべく、制度や法律を変えていこうとする国家ならば、そんな国家に未来なんてあるのだろうか。
高齢者や、身体的・精神的、なにかしらの障害を持っている人たちが、将来になんの不安も持たないでいられるために、福祉があり、社会的人権を守られているはずなのに。
…そんなことを考えることが多くなってしまうような、どこかの准教授の発言やら、事件の報道やら、政治の動向やらが耳に入る機会が増えている気がする。
そんな時に観たこの作品には、激しく胸をかき乱された。
しかし、多くを語りすぎない演出ながら、仄かな希望を感じさせる最後のシーンで、観ている私たちがすべきことを暗に教えてくれている気がした。
今、なにを守らなくてはいけないのか、そしてはっきりそれを言い続けるということ。
観終えた後に、大切な約束をしたような気持ちになった作品。