骨折り損

PLAN 75の骨折り損のレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
3.6
そういう映画じゃないことは分かっているが、あえて言いたい。展開がもっと欲しかったと。

派手な設定に興味を惹かれて見てみたが、映画の進み方はとても穏やかで、よく捉えれば丁寧だが、悪く言うと地味だった。75歳になると自分の命の選択ができるという設定一つで、過度な説明はしなくても当事者たちの感情はある程度想像できる。そのおかげでチープなSF的演出を見ずに済んだのはとても良かったが、逆にもっとこの設定がある程度展開を想像させてしまうからこその、裏切りが欲しかった。

正直、想像していた通りをそのまま描いてくれたという印象だった。ただ、それは悪いことばかりではなく、下手に作為的なことはせず、役者の力を信じているからこそ真摯に物語を伝えているように見えた。それは好印象だったが、話として凄く面白かったかといえばまたそれは別。

75歳になった老人、役所で働く男、施設で働く女性、この3人がもっと絡み合っていく話だと期待したが、意外にもそこまで劇的に話の中で面白くは作用していなかった気がする。そこが正直惜しいと感じた。立場違いの3人が最後にかけてより大きなカタルシスを生むような展開がもっとあれば、印象はだいぶ違ったと思う。

とても興味深い設定だったからこそ、色々と思うところがあったが、作者の強い気持ちが感じられる映画ではあった。
骨折り損

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