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PLAN 75のKHのレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
2.5
邦画の良さ(可能性)と限界が混在したような作品だと率直に思った。

PLAN75という制度を導入した日本という、ある意味でのディストピアを描きながらも、その制度に振り回される人々のリアリティを描いた社会問題系の映画。
確かにPLAN75は経済的合理性と言う観点では、正しい政策かもしれない。
しかし、合理という名のもと人間を生産性という尺度で淘汰していく世界に美しさはあるのか。日本の社会問題のひとつに高齢化の問題があり、それに伴い介護、年金など数え切れない問題が山積みである。また最近「老害」という言葉をよく耳にする。もちろん老害とは1部の人を指すのだが、このようなインパクトのある言葉は本来の言葉の意味に先行して、自分たちの感覚に影響してしまう懸念がある。
このような世代論は昔からあっただろう。しかしここ最近高齢化という問題も相まってか、高齢者を悪者とする風潮がよく見られる。そのような背景を踏まえた上で人間を生産性(年齢、障害など)という尺度で選別する社会は正常なのか?
このような問題が提起されている。

映画自体は良くも悪くも、いかにもカンヌっぽさのある作品だと思った。最後のシーンはこの世界の美しさを撮りたかったのかもしれないが、急だったのであまり繋がりが感じられず、映像自体のダイナミズムがなく不完全燃焼だった。
しかし、実際に有り得ないような制度を徹底的に検証しリアリティのある世界として描いたのは流石だと思った。
ただ一貫して物語の抑揚が少なく、よく言えばアートっぽい、悪く言えば退屈だとも言える作品。その点いかにも邦画っぽいと思ったが、芸術点が高いから退屈でもしょうがないは逃げだと思う。
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