こつぶライダー

PLAN 75のこつぶライダーのレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
3.5
今そこにある危機。

少子高齢化の波を突き進む日本における、近未来訪れそうなお話。

75歳以上の方の安楽死について。

これがフィクションでありながらも限りなく現実的に感じるのがこの作品の怖さである。

重いテーマなだけに、面白い作品ではないことは確か。
これから進む日本の社会に光はあるのか?


物語の焦点はあくまでも人物にあり。
・プラン75に申し込む高齢女性
・プラン75で働く若い男女
彼女ら彼らの背景から進む道は果たして?

随分と切れ味は悪い。
決して社会風刺ではなくて、人間模様を描いているから仕方ないのか。
提言するほど、ハッキリとしたラストではないけど、その分だけ私たちにテーマについて考えさせるキッカケを与えてくれた。


私の中でグッと来たのは磯村勇斗さん演じるプラン75申込窓口で働く岡部。

彼が天涯孤独の叔父と偶然遭遇し、プラン75への手続きを進めていくのだが、その過程で揺れ動く心理描写が凄かった。

これから死に場所に行くぞ!
と叔父を迎えに行くと、なかなか出てこない。
どうしたことかと、叔父は「普段は4時には起きるんだが、、、」とソワソワしている。

無理もない。今から死にに行くのだから。
道中、寂れた田舎の定食屋で昼食を摂る二人。岡部は叔父の緊張を取り除こうとお酒を注文するのだが、これが逆効果。山道で気持ち悪くなり嘔吐。
「、、、引き返そうか?」
そう尋ねる岡部だが、叔父は首を振る。


その後、無事に施設まで送り届けた岡部だったが、それでも気持ちはモヤがかかったまま。


最期の旅立ちを見送るって、なんて言葉をかけたら良いんだろう。
見ていてつらかったなあ。

長い間疎遠だった叔父と甥の関係も、運転中の会話でグッと距離が縮まるあたりが親族関係の不思議だよね。


倍賞千恵子さんのストーリーも良かったです。
どうしてその選択に行き着いたのか?
その過程って、まさに今日本で起きてることに他ならない。

単純には解決し切れない問題だからこそ、こうした「例えばこうしてみたらどうなるのか?」を映像として残し、多くの人の感情に問いかけてみるのは大事なことだと思いました。
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