このレビューはネタバレを含みます
超高齢化社会が進み、75歳を迎えると自ら「最期」を迎えられる制度「PLAN75」が施行された近未来の日本。
78歳の角谷ミチは清掃の仕事を失ったことをきっかけに、PLAN75を利用することを考え始めるが…
夫、子供、親戚など頼れる家族はいない。貯蓄もない。自分の家もない。そんな状況で仕事を失ってしまうと、誰だって絶望する。
ミチは、サポートサービスの若い女性との会話や交流したり、隣のベッドの老人の死に様を見たりした末、PLAN75の利用を中止。
自分の足で一歩一歩、帰路を進んでいく彼女。その目線の先には、力強く光を放つ太陽が燦々と燃えていた。
わかりやすく表には出さないが、ミチには「自分の力で生きなければ」というプライドがあった。だから生活保護も利用しないし、炊き出しの列にも並ばない。他人にも礼儀正しく接する。だからこそ、知人の死を目撃した後でPLAN75を利用しようとしたんだろう。
誰もが迎える未来のはずなのに、当事者以外は他人事のように過ごしているという点は、現代の日本社会のようだった。
当事者に接することで、PLAN75に疑問を感じる若者たちの描写があって良かった。
「人口も減っているはずだから、働き口はけっこうあるのでは？」「賃貸住宅の契約もゆるくなってそう」など、若干の疑問点は残ったものの、妙なリアリティとともに問題提起してくれる良作でした。
私ならPLAN75は利用しないだろうな…
