ぺぷ

PLAN 75のぺぷのレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
3.3
高齢者(=今後の生産量の期待値が大きいわけでもなければ、むしろ社会への負担リスクが大きくなる存在)であることを理由にやんわりと社会から切り離されていく過程の描写が重い。選択肢のない職業と住処、同じような境遇にいる人との別れ。ポストへ投函される郵便物の量の比喩が面白いな、と思いました。

作中では75歳以上、を基準に安楽死を任意に選べる制度となっていますが、年齢はもちろんのこと、身体・知能障害や社会的な信用スコアなんかでもこの指標は代替できるのだろう、と思いました。どうも他人事とは思えない不穏さを感じるのはこの辺が理由のような気もします。
一度社会への貢献量(や将来に対するその期待値)みたいなものを指標にしてしまえば、その基準は色んな言葉で表せるし、その程度についても任意に設定できるじゃん、みたいな。

人が生きていくには他者から期待をされている、存在することを求められている、という要素も必要になるんじゃないかと考えています。子供であれば将来的な生産性や世代更新への期待、大人であれば職場での役職に見合った生産量や自分の子供や親族を養っていく責務、などなど。高齢者やハンディキャップを持つ人に対してそういった基準から新しく役割を付与しようとすることもなかなか難しいような気もするし、だからといって社会から切り離すというのも倫理的にも違うし、一度そういう切り離し方をすると、というリスクもあるし。
作品の中で倫理、人道的以外の要素から何らかの仮説なりメッセージが入っているともっと面白く感じたのかもしれないけど、飽くまでも問題提起で終わってしまったため、ぼんやりした印象も残ってしまいました。
色んな角度からのレビューがあって、それこみで楽しめたのは良かったです。
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