おりん

PLAN 75のおりんのレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
3.1
社会の圧力や不安定さ、個人個人に優しくない制度、違和感を感じる様子…。これらは、情景や役者の表情からしっかり見えていたように感じました。

社会や人物を淡々と描き、自然に見せていくのは好印象でした。ある事件から、国会で75歳から生死の選択権を与える制度・PLAN75が可決・施行され、凄まじいスピードで自然と受け入れられてゆく様子、外国人にも普通にPLAN75の関連施設で働くことを勧めていく流れ、生きる希望を失ってゆく高齢者の方々、垣間見えるそれぞれ疑問に感じる姿…結局は個人個人に寄り添わず優しく無い制度…。人の生死を選択できるのは果たして最善なことか?どの世代も幸せに生きるには世代間で楽しく暮らせる制度を作った方が良いのでは?残酷な社会にならないよう、意見を持ち、投票や意見を伝える+他人を尊重するなど行動に移す必要があると思いました。

しかし、登場人物の掴みの弱さやラストの強引さに自分は納得いかず。前半~中盤の不穏や圧力漂う描写が印象的だったものの、後半以降綺麗に纏めようとしたのか、強引かつぼんやりとした終わり方には呆れました。サチさんが突如PLAN75を選択したところで疑問を抱きましたし、PLAN75を選択して最期を迎えるのか、途中でやめる判断をするのかはっきりして欲しかったのが正直な感想です。綺麗に見せるラストは求めてません。主人公がどう選択したかがちゃんと見たかったです。

あとは、全体的に登場人物の描写が薄かったように思います。サチさんが生きる希望を失う描写は見えたし、その他人物が複雑な感情を抱いているのを感じたものの、それぞれがどんな思いでPLAN75を選択したのか、PLAN75の関連施設で働いているのかが見えてこなかったんです。ただただ若者がPLAN75の関連施設で働く姿や、PLAN75を選択するか否かが描かれていても、心情があまり見えて来なくて入り込めません。

特に、外国人労働者のマリアがどんな想いでPLAN75の関連施設で働き続けるのかも知りたかったですね。ただ単に自分の生活のために働くのか、それともその中で制度のやり方に疑問を抱いているのか。せっかく外国人労働者のことも題材に取り入れているのに、あまりシーンに関与しているように見えなかったのが残念でした。

全体を通しては、登場人物の掴みが弱くて入り込めなかったのと、強引かつぼんやりとしたラストに不満が大きくなりましたが、もしこのような制度が現実で視野に入ったときにそれぞれが考えていく必要があると思えたので観れて良かったです。
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