ゴダールはその91年の生涯を安楽死を選ぶことによって終わらせたのは周知の事実ですが、その事実もまた現今の安楽死の是非を問う社会に一石を投じたでしょう。しかしゴダールのように親族や関係者に恵まれている人は良いですが、実際には身寄りもないまま孤独死を迎える人が後を立たないと言います。
そのような孤独死という最期を迎えたり老後の身の回りの世話で周りに迷惑をかけたくないという人の為に、高齢者に向けてあらかじめ死後処理のサービスも約束したPLAN75という安楽死のサービスを支援することが国会で可決されたという架空の未来社会を舞台にこの物語は展開していきます。
そしてこのサービスを運営する会社で働く男性スタッフ、応募者の高齢者と直接電話で会話をするコールセンターの女性、そして詳細を知らされないまま仕事の斡旋を受けたフィリピンからの出稼ぎ労働者それぞれの視点から、このPLAN75が抱える問題点と彼らの良心の呵責が少しづつ浮き彫りにされてゆく様子が印象的でした。
この映画は安楽死の是非だけではなく死生観も問いているように思います。高齢の両親がいる身としてはとても辛くなったので、もう一度観ることはないと思いますが、観て良かったと思える作品でした。もっと親を大事にしたいと思えました。
静かで内省的な音楽もとても良かったです。
