その昔、わたしは70歳くらいになったら尊厳死が認められた世界になってて「今日がいい」と思った日に自分でそれを選択したいと思っていた。
それはとても良いことだと。
でも今、わたしの母が高齢になり少しずつ衰えていく身体と向き合いながら慎ましやかに日々暮らしているのを近くで見ていると以前のわたしの考えがとんでもない間違いだったと気づいた。
人間は幸せに暮らし続ける権利があるし誰かを助ける義務も少なからずあると思う。
誰だって「生きていて良かった」と思えるような社会を作るべきだよ。
この作品はとても恐ろしかった。
この国でもしもこんな制度が出来たら、と思うより先にこうなってしまうんじゃないかと思えたから。
このプランがないにせよ少子高齢化は爆速で進み高齢者の医療費負担はもちろん、その皺寄せのため度々の増税、社会保険料の跳ね上げ。
お給料はなかなか上がらないまま物価ばかりが上がる生活の中、少子高齢化と増税がセットになって伝えられるニュースを見ているとまるで年寄りが悪者のような気持ちにさせられるんじゃないかと、そしてお年寄りも肩身が狭い思いをするんじゃないかと。
以下ネタバレあります↓↓↓↓↓↓
一人暮らしの高齢女性の生活がめちゃくちゃリアルだし、事務的にプラン75を進めるシーンやそれを選び、殺風景な病院に行きあっさりと亡くなっていく描写やそれに携わる人たちが外国人労働者だったり。
まとめて火葬してまとめて供養しますって話や亡くなった人たちが身につけていた時計や貴金属を回収するシーンはアウシュビッツを彷彿とさせる恐ろしさに満ちている。
プラン75を選択した人に与えられるご褒美が10万しかない端金だったり、コールセンターの人たちが優しく寄り添う話し方をしながら研修では「あくまでもプラン75を選択した人たちが心変わりしないように誘導するように」と教えられてたり。
心底おぞましい。
遺品から大金を見つけた外国人のお母さんはそれを娘の手術費に当てられたのだろうか。