とらキチ

僕はドナーのとらキチのレビュー・感想・評価

僕はドナー(2012年製作の映画)
4.0
IMW2022パート1 ①
インド大映画祭と並ぶ一大インド映画祭、IMW2022パート1!コチラでも目出たく今日初日です!半年ぶり待ってました!
“超優秀”な精子ドナーとなった無職の青年の恋と結婚の話しで「盲目のメロディ〜インド式殺人狂騒曲〜」のアーユシュマーン・クラーナーのデビュー作。
コミカルなタッチで物語は進むが、次第にシリアスな色彩を帯びてくる。そんなストーリーの展開力にインド映画の底力を感じさせられる。主人公の因果がちゃんと巡ってしまう。そして父親の方が“道理”に適った発言をするというインド映画としては珍しいパターン。
インドでは2002年に商業目的の代理出産が合法化されていて、他の国で行うより安価なために当時外国人向けの“代理出産ツアー”なるものまであったという。その“代理母”となるのが貧困層の女性たちで、これは女性に対する搾取だとしてインド政府は代理出産を禁止する方向に動いている。ただ彼女達も貧困から抜け出すために“代理母”となっている側面もあるし、例え非合法化しても地下に潜って行われるだけだとの指摘もある。今作では“精子ドナー”の話しだが、根は一緒。インドにおける親子関係、家族の在り方も含め簡単には答えの出せない、とても難しいテーマを取り上げていた。
そして、パンジャブ人とベンガル人、他民族との結婚もテーマとなっている。元首都なだけあって知的レベルが高いベンガル人と、酒飲みでダンス好きのパンジャブ人。風習も結婚式の衣装も全然違うが、互いに感化されていく様子が微笑ましい。
更には“無職の大卒”。ダヌシュ主演の同テーマ、同タイトルの作品もあるが、これもインドでは本当に大問題らしく、大卒年齢の若い人達の非就業割合が25%にも及ぶらしい。日本では約2.5%だ。
ジャケ写からは想像もつかないほどの内容だった作品。脇を固める豪華な役者陣のおかげもあって、とても見応えがあった。
今回も終演後、IMW初日恒例の事務局広報の方のトークライブ、解説会があり、とても興味深い話しばかりで楽しめました。
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