甘口パンダ

フォールアウトの甘口パンダのネタバレレビュー・内容・結末

フォールアウト(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

銃乱射事件があり、その場に居合わせた高校生達の様子が描かれています。

fallout:悪い影響/仲たがい/後遺症/落ちる。

PTSDの典型的な症状(侵入症状、回避、麻痺、過覚醒など)が丁寧に数多く描かれていて、PTSDの症状を知識として学ぶのにぴったりな映画です。
とくに主演ベイダ役のジェナ・オルテガちゃんが銃撃事件後に初めて登校し、その場にいることは「怖い」「不安だ」という感情が鮮明に伝わってきたシーンが印象的でした。

とはいえ、事件前後で生活や心が一変したとドラマティックに演出されている訳でもなく。そのことがかえって現実味を帯びたものにしています。

気になったのは、事件後に被害者を支える社会的なシステムの存在をほとんど感じなかったこと。
事件の瞬間、ベイダと同じ場に居合わせたミアという女の子は、ピアカウンセリングっぽい役割になっていたベイダ以外に、周りに彼女を支える人がいなくて危なっかしく描かれていましたが、、、。すわ、深刻な二次被害者になるのかと。実際はどうなんだろう。被害者側からの働きかけがないと、サポートは受けられないのだろうか。傷ついた人の回復は自己責任なのか。

もしかしたら監督さんは、この映画を通して被害者の実際の姿(の一例)を観客に示し、現状では不十分な被害者へのケアやサポートをより厚くしていく必要性も訴えていたのかもしれません。


ちなみに、米国における銃撃事件のデータをまとめている「Gun Violence Archive」によると、アメリカの銃“乱射”事件の発生件数は、2020年に611件、2021年に698件。乱射だけでこの件数。これじゃあ連日の報道になりますね。『女神の見えざる手』で、ひとつの銃撃事件の余波はせいぜい1週間とか言及されてたのも納得😫 なお、銃撃現場に遭遇する子どもの数は、年間300万人とも言われているそうです。

想像以上で、映画のラストを、より複雑な気分で思い返してしまいました。



【追記】15/10/2022
CSで『ダイハード2』を放映していた。
作中で航空機が犯人グループの誘導で墜落して、私は急に米同時多発テロを思い出して涙が出た。20年以上も前に生中継を見た時のショックが思い出されてゾワゾワするし少し息苦しくなった。
日本からテレビ中継を見てただけの私でさえこんなにショックを受けるなら、ベイダのフラッシュバックは想像を絶するものだと、映画を見た時以上に痛感した。
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