腐り姫

マーターズの腐り姫のレビュー・感想・評価

マーターズ(2007年製作の映画)
5.0
当分映画レビューを書く気がなかったが、これは感想を残しておきたいと思わせた傑作。

最近改めて公開になった「屋敷女」が気になって仕方がないこの頃。いろんなサイトで解説などを読み興味が深くなるも劇場でスプラッターを見るほど根性のない私。

そんな折、マーターズがフレンチスプラッターの四天王の一つと言われているらしく(?)私の敬愛するパスカル・ロジェ監督作であり、おそらくデビュー作と思しきこの作品がアマゾンプライムにしれっと入っていたのを知り、金曜夜ドキドキしながら見てみたわけよ。

もうとにかく地獄発絶望経由の大地獄着なのよ。
スプラッター描写は劇場で見たら、生唾も飲めない程の衝撃だったかもしれないが、テレビで見る分には私は”なんのこれしき”程度であった。ただもうヒロインの置かれた絶望感がすさまじい。

とにかくプロットが素晴らしい。徐々に真相が明らかになっていく展開にどんどん引き込まれて引き込むだけ引き込まれた先には地獄のどん底なわけよ。この映画は数あるスプラッターホラーを通った猛者のために用意された最終着地点なのかもしれん。ホラー界の悪の女神のような存在かもしれん。(もはや自分でも何が言いたいかがわからん)

ただの復讐劇にとどまるのかなと思っていたら、まさかの展開。地獄の先にも地獄はあったのか。悪夢の遊園地映画(と私が勝手に呼んでいる)「マーダーライドショー」のように”まだこの先(地獄)はあるんですか?!”状態なわけよ。もう勘弁してやれよ。許してやったらどうや。

この作品は二部構成である。二部に入ってからは印象的な”音”が多発される。”例の音”が響く度に私たちはバッドな意味でのパブロフの犬よろしく、恐怖と絶望で縮み上がっちまう。
次はなに?次はなに?もうやめて、もうやめて、もうやめて。

行きつく先にあるのは
そう、後悔…。
あの時ああしていれば。あんなことがあったなあ。あの人に会いたい。あの頃に戻りたい。絶望の淵で見る、夢想。現実離脱。

そして死生観。
人間の最期を考えさせられる映画。
ふと思ったが、これはネタバレかもしれん。いやこんな拙い文章ではネタバレにはならんだろう。仮にネタバレであったとしても、全ストーリー展開を知っていたとしてもこの映画は十分見る価値がある。

女優の体を張った演技。めちゃくちゃ丁寧な起承転結。そういえば出ていた腐女子の星ことドランくん。センス感じさせるミスリード。えげつない特殊メイク。才能の詰め込みホラー映画の幕の内弁当よ。

傑作だ。傑作だよ。人前でこの映画が好きとは言えないけれど。もう私は虜だよ。でも思い出したくないよ。もう二度と見たくないよ。この先、これ以上のスプラッターホラーある?

今となっては、近作の「ゴーストランドの惨劇」が大衆向けに作られたそれなりの佳作のように感じられる。

ちょっと外の景色見ながら、お水飲んでゆっくりしたい。
腐り姫

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