現代では馴染みの無いパソコン通信を通じて出逢う男女のお話。
前置きとして、森田監督の撮る映画はいつもアーティスティックで前衛的だ。そんな森田監督が撮った恋愛映画。
今回、場面の合間合間にメールやチャット画面が差し込まれる。そのシーンはほとんどが無音で一文ずつ文章が差し込まれていき完全な間が生まれる。
無音で淡々と映し出されるこのシーンの中で感情は文章にのみ込められ、それを読み取っていく事で視聴者は(ハル)になり、(ほし)になって相手の気持ちを推理してしまう。この演出が素晴らしい。
その文章にはそれぞれ男女の担当がついているかの様な個性を放ち、考え方に性別の違いと特色が現れていた。
そして後半の文章から溢れ出す焦りや動揺がリアルで凄まじい。
お互いが異性の友達として割り切って始まったパソコン通信は、やっぱり最初から何かを意識し合っている様にも見えて、男女ってそう言うもんだよなあってつい思ってしまう。
あと、次の世代の出会い系サイトやマッチングアプリ感が強く、いつの時代もやってる事は変わらんなあという印象。
パソコン画面のブラウン管視点になるあのシーン。交互に喋り手をフォーカスして、次第に空間が歪んでいき、何も聞こえなくなり、目の前が真っ暗になっていくあの演出はマジで凄い。
ほしが職業を転々と変えていく事で、現代とあまり変わらない田舎の風景に変化をもたらす効果があった。それによって色んな衣装の深津絵里が見れたのはなかなか美味しい。
素晴らしい演出とストーリー。やっぱり森田監督だった。しかし、視聴後にこれは映画なのかを自問自答してしまいこの点数に落ち着いた。