アキヒロ

透明人間のアキヒロのレビュー・感想・評価

透明人間(1933年製作の映画)
3.5
H・G・ウェルズの原作を映画化したもの。
グリフィン博士が薬品で透明になってしまった上に、副作用で狂ってしまい、暴れ回る恐怖を描く。
別の視点から見ると、アイピング村の集団パニックと取ることもでき、どちらとしても怖い状況。

後年では実験によって誤って透明になってしまったという悲劇性にフォーカスされることが多いが、この作品はグリフィンは完全に狂ってしまっていて、警察官を20人殺し、列車事故で100人もの犠牲者を出している。
そして最終的には同僚だったケンプ博士まで殺してしまう。
最期、グリフィンは「私は神の領域に手を出してしまった」と言うことで、本作のテーマが"バベルの塔"と同じく、行き過ぎた科学・文明をもってアンタッチャブルな領域に手を出してはいけない、という教訓があるのが読み取れる。


物語に入り込むと恐ろしいが、一瞬我に返って撮影風景を想像してしまうとちょっと微笑ましく感じてしまう。。。後サングラスのデザインがめちゃくちゃ前衛的でオシャレ。
撮影のとき、崖を転がす車内に爆発物を仕込んでいたのか、崖に落ちる途中ですでに車内が炎上してしまうシーンがある。

ユニバーサル・ホラー映画は、ドラキュラもフランケンシュタインも原作がイギリスであり(映画そのものの制作国はアメリカだが)、本作のウェルズもイギリス人で、英文学の底力が分かる。
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