Hiroki

ブルービートルのHirokiのレビュー・感想・評価

ブルービートル(2023年製作の映画)
3.9
MarvelよりDC派の私としては楽しみにしていたのだけど、なんとまさかのDVDスルー。コミコンでは特別上映されていたみたいだけど。
ワーナーのDC作品が日本で劇場公開されないことって今まであったのだろうか...
ブルービートルはもともとメキシコ国境の街テキサス州エル・パソが舞台のラティーノの物語。
ということでクリエイター陣もキャスト陣もほぼラティーノとラティーナ。
キャストは『コブラ会』のショロ・マルデュエナ、『ナルコス』のダミアン・アルカザール、『ボーダーライン』のラオール・トゥルヒージョ、ネイマールの元カノとして有名なブルーナ・マルケジーニ。
渋い。渋すぎる。
さすがに日本ではこれでは客は呼べない。

さらにDCEUが終わる事も関係しているのかも。
映画好きな皆さまならご存知だと思うが、DCEUは次作2024年1月公開の『アクアマン』最新作で終わります。
これはみんな大好きジェームズ・ガンとピーター・サフランがDCスタジオの代表に就任して新たなDCUが始まるため。
まーつまりこれが発表された2023年1月以降のDCEUは若干消化試合感がある。
ただ『シャザム』『ザ・フラッシュ』『アクアマン』『ブルービートル』に関してはDCUにリブートする形で引き継ぐ事も発表されているので、完全な消化試合ではないはず。そう信じたい。
(ちなみにDCUは最初の10作品が発表されていてテレビシリーズ、アニメシリーズ、映画、ゲームなど多岐な表現方法に渡るが同じキャストが演じるためもーバットマンが4人になることはない。ただ別次元の“DCエルスワールズ”が存在し、マット・リーヴス『THE BATMAN』シリーズやトッド・フィリップス『ジョーカー』シリーズ、JJ・エイブラムス率いるバッド・ロボット・プロの作る新たなスーパーマンシリーズなどは別に制作されていくらしい。結局よくわからない...)

まーここらへんのDCのこれからはまたどこかで書くとして、今作に戻り興収は北米約0.7億ドル(約98億円)、全世界約1.3億ドル(約180億円)とメジャースタジオ×メジャーフランチャイズと考えたらなかなかやばい。
ただ北米だと2023年の33位ですぐ上の30位に『マーベルズ』が約0.8億ドル(約110億円)でいる状態なので、まースーパーヒーロー映画自体が過渡期という捉え方もできる。

ただ言うほど面白くないですか?というのが私の観た最初の感想。
たしかにスーパーヒーロー映画としては「見たことある」設定ばかりではある。
わけもわからずスーパーパワーを得てしまう冴えない主人公も、清廉潔白で力も持たずに悪と戦おうとする(そして主人公と恋に落ちる)ヒロインも、実は事情があって悪に手を染めてしまうヴィランも、ひたすら極悪な大企業も、敵を殺す事に悩むヒーローも、近親者の死も。
すべてに既視感が。
でもこれラティーノの物語っていうのがとても重要だと思うのですよ。

最近ラテンアメリカ(ラティーノ/ラティーナ)がメインの映画って昔より増えたと思う。
有名作をみてみても『インザハイツ』とかアニメの『ミラベルと魔法だらけの家』『スパイダーマン:スパイダーバース』とかありましたよね。
そしてそのどれもが家族やルーツの物語だった。
ラティーノはそういうモノを非常に大切にとらえた文化や慣習が多くある。

それを踏まえると今作が他のスーパーヒーローモノと明らかに違う点がひとつあって、スーパーパワーを持っている事を始めから家族もヒロインも周りのみんなが知っていて受け入れている事。
やはりスーパーヒーローといえばスパイダーマンもバットマンも最初はみんなそこに悩むじゃないですか。こんな自分が受け入れてもらえるのかって。
でもブルービートルは最初からみんなに知られている。
だからこそ家族みんなで戦う事ができる。スーパーヒーローが家族や大切な人を守ることはあっても、家族からアドバイスとかではなく直接的に守ってもらうことなんて今までありました?
しかもその特別な力を持たない家族が戦闘でも役に立つという所と、多彩なガジェット、そしてコメディとしての使い方、ここらへんのバランスというのが非常に巧妙かつ絶妙だなーと。

まーでも問題点もあって、上記を採用するためにヴィランがとんでもなく弱いんですよねー。ただの強化人間なので。
強いヴィランにすると家族は戦えない。
ここが上がらない要因ではある。
ただまー『アベンジャーズ/エンドゲーム』とか観た後にこれを観たらさすがに「えっ?」とはなるよなー。
そんなこと言ったらバットマンシリーズもそーだけど。
スーパーヒーローモノはこの戦力均衡みたいなものは非常に難しいですね。

キャストとしてはハイメ・レイエス/ブルービートルの祖母役のアドリアナ・バラッザが素晴らしい!『バベル』の家政婦役の人だった人。
まーこの人の普段のおとぼけの感じからギアが入った時に元革命家で武器をぶっ放す姿への振り幅が半端ない。かっこいい!
あとは叔父役のジョージ・ロペスも良い。
勝手に発明とかしている変人なんだけどガジェット周りも担当しつつ、さらにコメディリリーフ的な立ち位置もこなすという万能ぶり。
ただやはりヴィランは物足りない。
スーザン・サランドンだけでは...せめて実際に戦うカラパックス/OMAC役はもう少しビッグなキャスティングにしたかったかな。でもラティーノ限定だと厳しいのかなー...

という事で総合的にはなかなか良かったかなーと。
しかもミドルクレジットでしっかりクリフハンガーを仕掛けていたのでぜひとも続篇期待したい!
最初に書いた通りDCUに引き継がれる中に今作も入っているはずなので。
楽しみに待ちたいと思います!

2023-69
Hiroki

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