じゅ

ドント・ウォーリー・ダーリンのじゅのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

おお。ピューさんの貴重な顔ラップ。
パンフレットに載っけといてや。

マーガレットがフランク邸で「私たちはなぜここへ?」とか言って夫に連れてかれた後、ふといなくなったジャックを探しにいったアリスがマーガレットを偶然見つけたときにオットがカーテンを閉めて、その時一瞬絶叫してる顔みたいなの映されたのぞわっとした。
そういうサブリミナル的なのちょこちょこやってたな。


ジャック・チェンバースと妻アリスが暮らすのは砂漠の中の町ヴィクトリー。町の男たちは仕事に励み、女たちは専業主婦として家事に精を出し夫の帰りを待つ。革新的な材料を開発するというヴィクトリー計画が推進されるこの町は、各々の夫婦の大きく綺麗な家が建ち並び、何でも揃うショッピングセンターがあって、皆が裕福で誰とも友好な関係を築いている。ただ、町を囲む砂漠には計画に携わる男たちしか立ち入ることができず、その向こうに何があるのか女たちは知らない。
最初に町に疑問を抱いたのはマーガレット。なぜ私たちはこの町にいるのかと皆に投げかけ、以来彼女は触れてはいけない人のような扱いを受ける。ある日アリスは砂漠に飛行機が墜ちるのを目撃し、慌てて砂漠へ駆け出した。高台に登るとそこはヴィクトリー計画の本部と呼ばれる場所。助けを求めてガラス戸に手を触れると奇妙な映像がフラッシュバックする。気がつくと自宅にいたが、以降奇妙な白昼夢を繰り返し見るようになる。さらに、マーガレットが家の屋根の上で自らの首を切って転落するところを目撃したが、町はこの事件をなかったことにした。
一方でジャックは昇進を勝ち取る。自宅へ上司のフランクらを招いてパーティを開くが、アリスがフランクへこの町の虚偽について問い詰めたことでパーティはお開きに。アリスはマーガレットと同様に町の職員に連れ去られ、記憶処理の処置を受ける。処置の最中見えたのは、ジャックとアリスの過去。失職して無職のジャックを医師のアリスが献身的に支える。ジャックは家事も何もせず、アリスは「30時間勤務で12人を縫合してまた6時間後に出勤」などと激務続きだが、それでもアリスはジャックも仕事も愛していた。
退院して日常に戻ったアリスだったが、また記憶が蘇る。引きずられる自分の身体。私に何をしたのかとジャックを問い詰める。この世界はフランクが創ったいわば夢の中の世界で、現実ではアリスとジャックの肉体が横たわっている。人生を奪われたことを知り怒るアリスはジャックを殺し、町を出るために再び本部へ走る。職員たちとの逃亡劇の末に本部の目の前にたどり着いたアリスを、ジャックの幻が抱きしめる。扉に手を触れたアリスが次に目覚めた場所は・・・・・・。


なんというかなんとも、うだつの上がらん男性たちが主に集まったのかなってかんじの世界だったな。ジャックがユーザー登録した時に妻を指定するところもあったっけか。アリスも気づいてたけど、巻き込まれて眠らされてる女性らがどこかにいるわけか。アクティブユーザー数72って言ってた気がするから、30人そこそこか。(一応中にはバニーさんみたいに現実で子供を亡くしたか何か知らんけど自分の意思で来てる人もいるみたい。)

今の世界で押さえ付けられていた俺たちはこのヴィクトリーで世界を変える、この世界は俺たちのものだ!みたいなノリって、つまり現実から逃げて仮想世界に集まった男たちが勝手に言ってんだよな。72人で。どこに届くわけでもないことを知りながら。もしかしたらどこに届くわけでもないことを知ってるからギャーギャー騒げてたかも。なかなか哀れすぎんか。
しかも中にはアリスみたいにべつに来たくなかった人を妻として従えて来てるやつもいる。アリスが脱出しようと家を飛び出した時は新入りのヴァイオレットの夫が「話が違うじゃないか」みたいなかんじで狼狽してたか。ヴァイオレットも巻き込まれた女性の1人なんだろうな。
なりたい自分になるために仮想現実に飛び込むだけじゃなく、それに妻にしたい誰かの人生も巻き込んで己の理想の生贄にする。なんてこった。

最後はそんな男の支配から卒業してみせた。アリスはジャックに無理やり連れてこられたこの世界からも、アリスを縛り付けていたジャックの愛からすらも脱した。
シェリーさんもそうか。夫でありこの世界の創始者で支配者であるフランクがアリスを止められないとわかると、彼をザクっとグリっと刺し殺して彼の立場を奪ってみせた。
男が支配する女とその脱出(あるいは逆転)が本作の重要なテーマの1つだったように見えた。


脱出...できたと思っていいんだよな...。
「この支配からの卒業」的なことがテーマの1つだとしたら脱出できてなきゃいけないでしょっていうメタ読みくらいしか根拠ないけど。
あるいは男のために創られたこの世界でジャックが死んだ以上アリスの存在意義というか居場所がなくなったから留めておけないとか。もしかしたらもしかして、シェリーさんがフランクからこの世界を奪ったのは維持・管理のためじゃなく破壊のためだったとか。(まあフランクが言ってたように強くてどうのこうので何より奥ゆかしいっていう理想の妻像を受け入れるのが義務だと思ってて、アリス他各々の妻たちもそうあるべきだと思って見ての通りフランクに代わってアリスを追わせたたんじゃないかってのが8割だけど。)


男たちは砂漠の本部に向かって行って結局何してたんだろう。一旦現実の方の世界に帰って隣に横たわる"妻"の肉体の維持をしてたとかかな。それくらいしか思い浮かばん。
それくらいしか思い浮かばんけど、仮にそうならそこまでして巻き込まれたアリスたちが尚のこと不憫だ。災難中の災難。


ちなみに、ちょいちょい地震というか振動が発生するのと飛行機が落ちたのが見えたのは結局何だったんだろう。
クリス・パインはマンハッタン計画を準えたんだと。パンフレットに書いてた。あの揺れってそこに関係してきたりするんだろうか。「マンハッタン計画 地震」とかいうアホみたいな検索ワードでググっても特に何も出んけど。てか誰だったかが「夫が兵器の開発を匂わせるようなことを言ってた」みたいなこと話してたのも意味があったんだな。
飛行機の件は全く見えん。マーガレットの連れ去られたという息子が飛行機の玩具を持ってたりとか、なんか重要な要素な感はあるんだけど。

そういえばマーガレットの息子の身にはつまり何が起きた?連れ去られとは?
あの子って実はバニーさんの子供らと違って現実世界から連れてこられた生きている息子だったのかな。"本部"に触れて現実の方に帰っちゃったみたいな。で起きてそのままどっか行っちゃったみたいな。
いや万が一そうだとしたら夫は呑気にフランクのパーティに出てる場合じゃねえよな。『インセプション』みたく夢の中なら時間の進みが超速いから数日過ごしても現実世界では数分、みたいなことがあるんならまあ。まあ...。彼なりの善意で息子を連れて来てただろうから息子のことを大切に思ってて心配しただろうけど、それでもヴィクトリーを抜ける決断はすぐにはしなかったか。最悪の結末を迎えたな。


地味に仮想現実で云々なかんじの物語でちょいちょい思うけど、その世界の中では身体的なダメージだの何だのも全部脳に送られる情報に過ぎないわけだし、その情報を上手いこといじくって脳が錯覚するダメージをほぼ0にするみたいなことしないんだろうか。たとえばフランクがシェリーからもらったザクッとグリッとも頭の中だけの出来事だから最悪なかったことにしてしまえるわけだ。創始者なら自分だけはその程度の情報の鎧は纏っててよさそうだけど。ユートピア目指しました系ならなおさら。
とりあえず本作においては女で妻であるシェリーが男で夫であるフランクをザクグリすることに重要な意義があったはずだからあれで良いんだけど、他の作品ではたまに思ったりする。

まあ、ジェンマ・チャンに刺されるんなら人生の良い締めくくりだろ。
じゅ

じゅ