ペイン

ドント・ウォーリー・ダーリンのペインのレビュー・感想・評価

4.3
女性映画監督2本立てその②

前作にして長編デビュー作『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』が絶賛されたオリビア・ワイルドの長編2作目。本作は、評判はそこそこながら私は支持したい。

わかりづらい例えにはなるが、『イット・フォローズ』を成功させた監督デヴィッド・ロバート・ミッチェルが、次に『アンダー・ザ・シルバーレイク』をぶっ込んできた感じにも通ずるものが本作にはある(※本作より『アンダー~』の方が更に怪作ではありますが⬅️)。

つまるところデビュー作『ブックスマート~』は、今思えばオリビア・ワイルドにとっては、『俺たちニュースキャスター』のアダム・マッケイ&ウィル・フェレル(製作総指揮)によってお膳立てされ“撮ってみた”作品に過ぎずないとも言え、本作『ドント・ウォーリン・ダーリン』こそが念願叶っての野心作とも言える。『アンダー・ザ・シルバーレイク』も然りですが、作り手が“これがやりたかった!”の方を全面的に打ち出すと世評や興行的にはやはり“コケ”易くなる。

しかしそんな作品群の中にも決して“嫌いになれない”、なんなら愛おしいと思わせてくれる作品はたしかにある。

本作はミッドセンチュリー・デザインのインテリア、華やかなカクテルドレス、プールで開かれるパーティー、そして成功者の勲章であるかのように走るオープンカー等々、それらの色彩設計や舞台設定はダグラス・サーク監督の作品群を思わせる、まさしく50年代アメリカ!な感じ。そのユートピア世界を舞台に“悪夢”を描くスリラーという、デヴィッド・リンチよろしくなムードすらもある(※赤い服の奴らとかジョーダン・ピールみというのもたしかにわかる)。

また前作と違い、“スター俳優”2人(※ハリー・スタイルズとフローレンス・ピュー)を起用した“スター映画然”とした輝きのようなものも画面全体を支配しており、画面の細部に至るまで官能的ともいえるデザイン性と驚きのあるショットが連続する。

また、オリビア・ワイルドが好きだというバズビー・バークレー(※ハリウッド・ミュージカル史最大の天才振付師、映画監督と称される)を意識したと言われる、主人公が何度も幻視するダンスシーンは鏡の反射が魔術的に表象された素晴らしい演出。カメラマンが『ブラック・スワン』の人と知りまた納得。

これまた監督が意識した作品として挙げている『トゥルーマン・ショー』や、最近で言うとM・ナイト・シャマラン『オールド』なんかを思わせるものがあるというとややネタバレチックだが、所謂ポスターから見てとれるような『マリッジ・ストーリー』的ある一組のカップルの話として観ると“良くも悪くも”斜め上のものを見せられる。

ただ、本編以上にその裏側で本作を取り巻く人たちのトピックが騒々しい本作。オリビア・ワイルドとハリー・スタイルズが本作を機に交際に発展し(※現在は破局)、それをよく思わなかったと思われるフローレンス・ピューが度々本作のプレミア上映イベント等に参加しなかったり、かと思えば最近はオリビア・ワイルドの親友エミリー・ラタコウスキーがハリー・スタイルズと“東京”での熱々キスをパパラッチされ、オリビアとエミリーの間には気まずい空気が。

好みや評価の差はぱっくり割れる作品であるのは間違いが、意表を突かれたいそこのあなたにはオススメだ!
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