ぼっちザうぉっちゃー

ドント・ウォーリー・ダーリンのぼっちザうぉっちゃーのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

「理想の家庭」という呪縛を中心とした、世界の“システム違い”のミスリードに騙された。
変に風呂敷が広がることなく、上手くコンパクトにまとまっていたと思う。

テーマの方は、ゴージャスで美しく、穏やかな主婦生活。大義のために働きに出る夫や、食卓に並べられた晩餐のように美味しく頂かれるために美しさを保つ妻、子供を持つことで迎える「家族の完成」など、前時代的で甘美な価値観が、バレエによる形式美的な統一性で表現されていた。
開拓したての自然と隣り合うような舞台周りの設定によって、あたかもそれが革新的な在り方であるかのように作られているのもどこか皮肉めいている気がした。

そして仕掛けを見せる場面はどこか『ワンダヴィジョン』ぽくも感じるもので、窓ガラスに押しつぶされたり、自らラップで窒息しかけたり、中身のない卵だったりで、差し迫る不穏さがなかなかインパクトあるビジュアルで表現されていた。またそれを囃し立てるような切迫感ある音楽も不気味だった。

ラストは少々駆け足な気がしたが、幸せな虚飾より汲々とした現実を選んだ意志は、女性としての自立以上に強いものがあろうし、夫もそれに応えられたらいいなと思った。