ディストピアSF。
特に「女性の社会的な抑圧」に力点が置かれている。
正直退屈してしまった!
編集とシナリオが冗漫で、演出の生硬さが目立つからだ。
「あの画もこの画も見せてアートハウスホラーに寄せたい」
「かつ社会風刺もしっかり表現したい」
このように欲張って二兎も三兎も追った結果、せいぜい90分で十分な話を無理やり120分以上に膨張させてしまった感がある。
総体としては不満が残ったが、50年代アメリカ郊外の暮らしを再現した鮮烈な美術、キャストの演技など個別の要素には良いなーという点がいくつかあった。
例えば"自由を剥奪され抑圧される女性"を映像で表現した複数のシーン。
いずれもフローレンス・ピューの体を張った演技に頭が下がる。
顔をラップでグルグル巻きにして変顔になったり、
中国で頻発する事件よろしく壁と窓ガラスに顔と体を挟まれて変顔になったり、
ルドヴィコ療法を施されて変顔になったり、
裸足で砂漠を駆け抜けたり、
涙ぐましい頑張りだ!
クラシックカーのカーチェイスも楽しかった!
観賞後、タイトルの『Don't Worry Darling』は画一的な幸福の尺度を押し付ける夫による妻への語りかけだったのかと気づいてゾッとした。
↓関連作品を思いつくまま↓
■ディストピア
┗システムに疑問を持ち「再教育」される主人公
『1984』
『未来世紀ブラジル』
『THX-1138』
┗「理想郷」崩壊のカタストロフとカタルシス
┗『ワンダヴィジョン』
┗『トゥルーマンショー』
┗『omori』(ゲーム)
┗『SSSS.GRIDMAN』
■監禁による他者の尊厳の剥奪
┗女性の抑圧
┗『レボリューショナリーロード』
┗毒親
┗『RUN』
■50年代アメリカの再現
┗ダグラス・サーク
┗『エデンより彼方に』
■サイコスリラー演出
┗バレエ
『ブラックスワン』
┗『ローズマリーの赤ちゃん』
■小ネタ
┗ジョーダン・ピール『us』
┗キューブリック『時計仕掛けのオレンジ』