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世界で戦うフィルムたちのIMAOのレビュー・感想・評価

世界で戦うフィルムたち(2022年製作の映画)
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なんだろう、このモヤモヤした気分は…この映画の監督・亀山睦木さんが努力しているのは分かるし、彼女の姿勢は前向きで、その行動力は尊敬に値する。でも問題なのは、その方向が主に自分に向かっているところかもしれない。そこに「人のため」とか「映画産業のため」という意識は薄いように思える。少なくともこの映画を観る限りにおいては…(この映画の中でインタビューに答える深田晃司監督は違う、と思いましたが)
もっと平たく言うと、結局彼女は何のために映画を撮っているのだろうか?世界で勝負する映画を撮るためなのか?有名になりたいからか?それならば「いいね!」が欲しいだけのYouTuberとなんら変わらない。多分、これは自分自身が迷っている。それを証拠に、彼女は様々な人々にインタビューし様々な意見を聞くが、そこに一貫した答えがない。答えが無いのは当然だが、編集段階でも迷っている。彼女自身が今その渦中にいるので、一番大事なことが抜け落ちているのだ。図らずもそうした迷いこそが、この映画のテーマになっている。だからこれは『世界で戦うフィルムたち』ではなくて『世界で戦う私』だと思ったりもした。
そういう意味でこの作品は、映画というよりは良く出来たYouTube映像という感じがするが、ワンカット良いカットがある。それはラストの方で、彼女が多分ルーティンとしているコーヒーを煎れる作業だ。そこには彼女の顔は映っていない。だがそれ故に、彼女自身が写っている。この映像を入れなくてもこの作品は成り立つが、このカットをあえて入れたことが、この作品をギリギリ映画足らしめていると思う。
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