ビンさん

世界で戦うフィルムたちのビンさんのレビュー・感想・評価

世界で戦うフィルムたち(2022年製作の映画)
3.8
シアターセブンにて鑑賞。

日本のインディーズの映画監督が、自作を海外の映画祭へ出品する経緯を記録したドキュメンタリー映画。

タイトルが複数形になっているので、いろんな監督が、それぞれにどのような行動を取ったのかを描くのかと思いきや、本作の中心となるのは亀山睦木(かめやま・むつき)さんという若き女性監督である。
自作である『12ヶ月のカイ』という作品でもって海外の映画祭へ飛び込んでいく姿を綴っていく。
もちろん、本作の監督も亀山さんだ。

まず、なぜ国内じゃなく海外の映画祭なんだろう? と思ったのだが、『12ヶ月のカイ』はそもそもSF映画であって、確か周囲で作品を理解できる環境になかったので、ならば海外の方はどう観てくれるだろう、というきっかけだったかと。
さらに、コロナという未曾有の事態も関係していく。
自身の作品をどうやって世間に発信していくか、その方法はクリエイターそれぞれの事情も関わって来ることだろうが、亀山監督はまず世界で認知される方法を選んだということだ。

自信のない英語力でありながら、こうと決めたら突っ走る亀山監督のバイタリティがとにかく素晴らしく、そこはテンポよく詳細に記録されているので、是非ともご覧になって確認してほしい。
また、海外で自身の作品をどのようにして売り込んでいくかについては、普段映画を観る立場でしかない僕には、ほとんど関わって来ないことなので、じつに興味深い映像の連続だった。

また、亀山監督の姿が綴られるとともに、数多くの映画監督や業界関係者による、映画業界の現状等々についての発言も、亀山監督の取材によって記録されているのも興味深く観ることが出来た。

舞台挨拶ではシネマプランナーズの代表氏の司会で亀山監督が登壇。
映画では描かれていない監督自身の本音等も飛び出して更に興味深く。
特にそこで語られていた、SNSを使った作品の告知における一苦言(笑)については、僕自身も常に思っていたことだけに、強烈なシンパシーを感じた。

映画好きならば、是非観ておくことをお勧めしたいドキュメンタリー映画である。

そして、肝心の『12ヶ月のカイ』だが、現時点では今月、東京での一般公開は決まっているが、大阪では今のところ未定とのこと。
監督のバイタリティが効をなし、数々の映画賞で評価された『12ヶ月のカイ』を鑑賞してこそ、本作の本当の完成だと思うので、是非とも大阪での公開も切に願う次第である。
ビンさん

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