半兵衛

花札渡世の半兵衛のレビュー・感想・評価

花札渡世(1967年製作の映画)
4.5
女性ものを多く手掛けてきた成澤昌茂によるクールな女性への視線、スタイリッシュな映像が他の任侠映画とはひと味違う作風へと昇華されていったヤクザ映画の名編。そんなドライでノワールなスタイルの物語にドライな演技を持ち味とするそれでいて若さゆえの未熟さを醸し出す梅宮辰夫はぴったりで、好きな女のために命を懸けるも報われずそれをクールに受け止める主人公を好演している。

梅宮はおろか登場する男たちをその美貌で次々に狂わせていく運命の女・鰐淵晴子のはかなさとしたたかさを兼ね備えたヒロインもどうしても男が一方的に押し付けている女性像になりがちな任侠映画のキャラとは一線を画すもので、自分を愛する梅宮への対応も辛い余韻を残す。

白黒の映像、遠藤辰雄や安部徹、西村晃の三者違った個性の悪党ぶり、老侠客伴淳三郎の渋い演技、沢村貞子の老獪さ…すべてが見事に合致してラストのほろ苦さへ繋がっていく演出が圧巻。

カメラワーク、梅宮の呟く台詞、演技すべてが決まっているエンディングも最高だけれどちょっとキザ。

ちなみにこのスチールがワイズ出版の『遠藤太津朗』の表紙に使われており、長い間気になっていた作品でもある。
半兵衛

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