Ryoma

ザ・ホエールのRyomaのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
4.0
室内で繰り広げられる会話…空間的には限りなく制限され狭いはずだけれども、それとは対照的に主人公ブレンダーフレイザー演じる男性における感情の揺れ動く振れ幅や心の葛藤の深淵さが凄まじく、彼の剥き出しの演技、メイクアップ、身体作りの凄さが相まって観ているこちらも非常に痛く苦しかった。それ故に目を瞑りたくなるシーンもあったけれどもそれがあったからこそかなり心の奥深くに届くものがあった気がする。
随所に張り巡らされた伏線の秀逸な回収やそれに類する圧巻のクライマックスはそれまでの陰鬱な雰囲気や痛々しい描写をも翻す途轍もないインパクトと同時に仄かな感動を与えてくれた。
短い寿命、残された時間の中で過去の悔恨と対峙する主人公のもがき苦しむ姿が印象的な本作。長い年月放置してきた関係性を修復したり一から構築するのは実に困難なことを痛感したけれども、お互いの至らなさや過ちを懺悔し再び良好とまではいかなくても少しでもお互いを認め合え許しあえる存在になれたら人生においてこれほど幸運で素晴らしいことはないなと感じた。
本当の意味で他人を変えることは誰にもできないのかもしれないけれど、相手を想う気持ちや心配する気持ちはその人を思っているがために芽生えるものでありそういう気持ちは大切にしていきたいし、そういった気持ちが積み重なることで少しでもその人のためになれたりいい方向に傾いたりできればいいなと思った。そのためにも“人を信じること“は大切なのだと感じた。信じるたびに裏切られたり傷付き悲しみを抱いたりすることもないとは言えないけれども、そういう気持ちを忘れないで生きていきたい。
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