こーき

ザ・ホエールのこーきのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

なんかすっごく泣いてしまった。
自分がこの映画の良さを上手く言語化できないのが憎い。
贖罪と救済の物語っていうテーマが凄く良い。
主人公が文学の教授だからなのか、セリフにもなにか文学的な美しさを感じた。
死期が迫った人間の物語を全編通してほぼ室内だけで退屈させないで、感動させるのがすごい。
自分が経験したこととすごく重なる部分が多くて、自然と涙が出ていた。
リズとチャーリーの関係がすごくいい。兄を過食症で亡くしてしまっているから、チャーリーがどんな状態でも、ご飯を与えてしまう。
白鯨の小説がすごく読みたくなった。

自分の経験無しでもこの映画はすっごく良い映画だった。
徐々に明かされてく人間関係の中一つ一つにちゃんと意味があって、全編通して会話が主軸なのにどうしてこんなに飽きないで、むしろ面白いんだろうって感じた。洋画の二人きりでの会話のシーンは邦画では絶対に表現できない独特の雰囲気と良さがあるんだと再認識させられた。


主人公も言ってた通り正直になって一旦ここに全部書いてみることにします。
自分は母親を12月に亡くしました。
原因はお酒で、自分自身の怠惰のせいで亡くなったとも言えてしまうと思います。全然病院には行きたがらないで、入院と退院を繰り返して最後に救急車に運ばれた時にはもう、足がパンパンに腫れていて自分でまともに生活できないようでした。本当に今作の主人公みたいに。入院したと聴き、入院したなら多少は症状が良くなるだろうと安心していたら、父から命の瀬戸際を彷徨っていると言われ、何も考えられずただただ呆然としていました。上京している自分が久しぶりに見た母親は管で繋げられて意識がない状態でもう生きているのかどうかもわかりませんでした。涙が止まりませんでした。最後に母と話せたのは、幸い意識が回復している時で、喋ることはできないですが、自分が聴いたり話したことに、うんうんと頷いたりしながら30分ほど話しました。他愛のない、普通の会話でした。その時から母親の死については覚悟はできており、息を引き取ったと父からのLINEで知った時には、実感がうまく湧かず、その日も普通に大学に行けました。葬儀の前日に実家に戻り、母の顔を見た時に、母の顔をまじまじと見て、綺麗だなと思いました。自分で言うのもあれですが、自分の母はそこそこ美人で、周りからも自慢の奥さんだと父はよく言われていました。葬儀中も何かふわふわとしていて、あまり気持ちが定まっていませんでした。母の死から少し経つと、色々な人がお線香をあげに家に来ました。懐かしい人もいれば、初めて見る人も。母との思い出を話すと、徐々に、徐々に母は遠いところに行ってしまったのだと実感が湧くようになりました。そんな中でも父親の姿を見てるのが少し辛かったです。個人的には父を強い人間と感じるのは親子の性だと考えます。そんな父の涙を流す姿を見ると、親と子という関係だった自分とは違う、自分には分からない悲しみに悩まされる姿を見るのはとても辛かったです。四ヶ月が経った今が、一番母の死を感じています。昔は夜一人で家にいても何も感じなかったはずなのに、今は謎の孤独感を感じています。忘れ物を取りに実家に日帰りで行った際も、母が大事にしていた飼い猫を撫でたり、隣に住む祖父母と二つ上の兄とご飯を食べてるだけでも、なぜか涙が出てきてしまいました。自分でもよく分からない言葉にできない感情が自分にあるのだと思います。
映画を見ていると、人の死というのは至極当然のように出てきますが、その人の死というものの重みにこの映画は改めて気づかせてくれました。
こーき

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