ささ

ザ・ホエールのささのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

広い枯れた畑に囲まれた車道。バスが停り、人が歩いていく。冒頭の人は娘だったのかなと思う。

始め、自慰をして死にかけた主人公と少年が出会う。少年は罪の意識を持ちながらも善行を行おうとしていた。

そして、後に娘が幼少期に書いたと知る白鯨のエッセイ。娘にとって白鯨は父親だったのだと思う。


少年は後に「肉片から解放され、霊として魂は救われる」的なニュアンスの事を言っていた。

肉片とは、肉欲とも思える。
妻は主人公は娘が欲しかったから私と結婚したと言っていた。
主人公が亡くなった彼を思い返す時には、容姿を美しいと言ってくれた。愛し合ったと言っていた。

主人公の肥大した身体は、何重にも覆い隠した心の壁にも思える。

この壁は主人公の家や真っ黒なウェブ画面であり、食事であり、お金の支援や何度も繰り返すエッセイの勉強でもあるし、主人公の生活風景でもあると思う。
そして娘の思った退屈な白鯨の容姿の話である。

愛する人を失った主人公は壁を作り、ただ死を待つ無気力な状態になっていた。

娘は絡まり凝り固まった型をエネルギッシュに壊していく。

主人公は形式的、文法的なやりとりを崩壊し、後に残るあるがままの素直な気持ちを伝える。

作中で主人公は終末論を多くの人々が地獄に落ち、僅かな人々だけ生き残る残酷な物語だと言っていたと思う。

また、主人公のセリフの「人生でたった一度だけ、正しい事をしたと信じたい」や少年の行動、主人公の肉体の様に、自分の過ちや醜さを受け入れた上で少しでも良い行いをしようとする。この想いのバランスがこの作品の魅力だと思った。
看護師もそうだと思う。

この作品は冒頭に話していたエッセイの文法の様に同じ行為を少し変化しながらも繰り返していたとおもう。
最後に娘がエッセイを読み、繰り返し聴いた文の先へ進み、最後の言葉の重みが心に刺さった。

父と娘はお互いを救う事ができたと思う。


この繰り返しを娘が破壊する事で話は進むが、本作に登場する主要な人物達にとって繰り返す事は必要な過程であるのも大切な事だと思う。
大切な人や信仰を失った人々には寄り添い少しずつ穴を埋める時間が必要でもある。
ささ

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