ラム

ザ・ホエールのラムのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

大粒の涙が出て止まらなかった。

自分に素直に生きた結果、大切な誰かを傷つけてしまうこと。
それが人生を分岐し大切なものを壊してしまう。

少しづつ動き始める娘と父の時間。
少しづつ溶けていく娘の気持ち。
やっぱり許せない、でも大好きなお父さん。
歩み寄れない、歩み寄りたい。
素直になれずに人を傷つけてしまう自分が大嫌い。その他の人間全員が大嫌い。
もうどうでもいいけど、やっぱり大好きなお父さん。
楽しかった思い出。
一緒に暮らしてた時はめちゃくちゃ仲良しの父娘だったんだろうなぁ。
だから今、余計憎いし辛いし許せないんだろうなぁ。
妻と夫だった頃は2人は仲良しで、妻はチャーリーの事が大好きだったんだろうなぁ。
そんな家族の姿が、娘と母・そしてチャーリーとのやり取りで想像出来た。

過去に犯した罪。
後悔しても取り戻せない時間。

狭いアパートの室内だけで、ごく短期間のお話だったが、父娘、夫婦、友人それぞれにとって赦しの時間だったように思う。

例えば兄の最期を看取れなかった妹がチャーリーに寄り添うことであり、
宣教師である彼が家族や教会に犯した罪への赦しであり、
チャーリー自身も、大切な人への赦しを乞うていたように思った。

人は誰かを救うことは出来ないかもしれないけど、人は人の優しさで癒されると思う。
救いはその先にあるのかもしれないと思った。

チャーリーの事をみんなが好きなのは彼のポジティブさや、優しさ、ユーモア、誠実さ、そんな魅力に溢れているから。
272キロの見た目に隠れたチャーリーの本質がわかる人には。
ただ見た目だけで判断する人がいるのも事実。
映画の中ではその辺もありのまま描かれていて、リアリティがあって良かった。

観る人によって、
その人の立場や家庭環境、宗教、
配偶者の有無や子供の有無によって
いろんな解釈が出来る映画だと思います。

私はちょうど年頃の娘の姿にエリーを重ね合わせて感情移入してしまいました。

冒頭シーンで、ここまで歩いてきて!っていうエリーのセリフに、
「私の事大切に思うならここまで来て抱きしめて」っていう気持ちが込められてるんじゃないかな?って思って。
父の姿をバカにしながらもお父さんを好きな本心との葛藤を感じてしまい
もうその辺から涙腺崩壊してました。

とっても良き映画でした。
ラム

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